「いつまで働くんですか?」と聞かれて
先日,大学の同窓会で20代の会社員と話をしていたとき,彼からこんなことを言われました。
「先輩,どうして,そんなに長く働きたいのですか?」
「僕なんか,すぐにでも会社を辞めて遊んで暮らしたいですよ」
なるほど。若い人からすれば,そう思うのも無理はありません。
働き盛りの時期,特に新入社員や若手社員のころは,仕事を覚えるだけでも大変です。忙しさに加えて,上司や先輩にいいように扱われ,時には理不尽なメにあうこともあります。
ワタシも若いころは,昭和の空気が残る中,「上司の命令は絶対」というような空気の中で働いていました。
「仕事なんか辞めて,自由になりたい」
そんなことを何度思ったことでしょう。
今は時代も変わり,パワハラが問題視されるようになり,「働き方改革」などによって,昔より職場の雰囲気も民主的になったと思います。それでも,部下を評価するのも,人事権を持つのも基本的には上司です。
そう考えると,若い人たちの「すぐにでも会社を辞めたい」という気持ちも,ワタシにはよく分かります。
ところが,歳を重ねると,今度は別の現実が待っています。
若手社員から管理職になり,働き盛りを迎える。そしてさらに歳を重ねると,今度は淘汰が始まり,上のポストが少なくなってきます。
「名ばかり管理職」や「部下なし管理職」と呼ばれる立場になる人も出てきます。
多くの日本の会社は,露骨な降格人事は行われないかもしれません。しかし,部下がいなくなり,権限も小さくなってゆき,気がつけば「ひとり親方」となってしまうのはよくあることです。自分で仕事を探し,自分で処理し,自分で責任を負う。周囲の見る目も,それまでとは変わってきます。
そして60歳で定年を迎えると,今度は再雇用という立場になります。
これまでの管理職から,かつての部下が上司となり,「一兵卒」として働かなければなりません。そして,給与も大幅に下がります。希望すれば65歳まで,ワタシがかつてお世話になった会社では70歳まで働くことができますが,会社の中での自分の居場所は,少しずつ小さくなっていくことになります。
幸いにして,ワタシはコロナ禍で外出が制限され,帰省もままならなかった単身赴任時代,有り余る単身赴任の時間を利用し行政書士の資格を取り,60歳で独立しました。
もちろん,独立しても仕事がすぐに来るわけではありません。サラリーマン時代は決まって支給されていた給与はなくなり,生活は不安定になります。命令してくれる人はいないので,何をするかを自分で考えて,自分で動かなければならないので,会社員時代とは違う大変さがあります。
それでも,今のワタシには「自分が主体的に仕事をしている」という実感があります。
資格を使って,自分でお客さまを開拓し,相手方の年齢の若い現役バリバリの方とも一緒に仕事をさせていただく。これは本当にうれしいことです。
「まだワタシにも,社会で役に立てることがある」
このことが,自分にとってどれくらい励みになるか。
また,行政書士の仕事は,漫然と書類を右から左に流す仕事でもありません。法律や制度はめまぐるしく変わり,新しい技術も次々に登場します。学ぶことは山ほどあるのです。
「人間は,ジジイになっても成長できるんだな」
自身の生活を見ていると,最近は,本気でそれを実感しています。
だからワタシは,体が動く限り,社会に迷惑をかけない限り,現役で働き続けたいと思っています。
もちろん,人間は,年齢とともに体も,そして頭も衰えて行きます。だから,「死ぬまで働く」というのは現実的ではないのかもしれません。でも,自分の中で目安とする年齢までは,元気に動けるように体を鍛え,頭を使い,いろいろなことを学びながら,自分自身をアップデートしていきたいと思っています。
若いころのワタシも,「働かないおじさん」を冷ややかな目で見ていました。
そして,「仕事なんて早く辞めて,自由に生きたい」と思っていました。
ところが,今のワタシは「できるだけ長く働きたい」と思っています。
人生というのは,面白いもので,「誰もが通る道」があるのだなと実感しています。
同窓会で「そんなにいつまでも働きたいですか?」と聞かれたとき,ワタシは笑って答えました。
「いやあ,ワタシも若いころは,あなたとまったく同じことを言っていたよ」
「仕事を辞めて遊んで暮らしたいと思っていたのも同じ」
でも,今のワタシは「早く仕事を辞めたい」と思う暇もないくらい,仕事や勉強に追い立てられています。そして,日々,アップデートされる自分をみると嬉しくして仕方がなくなります。
これからも,ずっと慌ただしい日々が続くのだと思いますが,こういう人生もまたいいものです。

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