在宅勤務はなぜ広がり,そして戻っていくのか
先日,インターネット関連事業大手のGMOインターネットグループが,これまで推奨してきた在宅勤務を原則として廃止するというニュースを目にしました。
在宅勤務そのものは,昔からプログラマーなどのIT業界では珍しい働き方ではありませんでした。しかし,2020年の新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに,「感染防止」という大義名分のもと,一般企業にも一気に広がりました。
当時ワタシが勤務していた会社でも,在宅勤務が積極的に推奨され,一時期は数値目標まで掲げて利用を促進していたほどです。
あの頃は,「毎日会社へ出勤するのは非効率だ」「社員が一堂に会する必要はない」「オフィスはもっと小さくできる」「この流れはコロナ後も元には戻らない」といった論調があふれていました。
実際,在宅勤務には多くのメリットがありました。何より通勤時間がなくなりますし,自宅という慣れた環境で仕事ができます。ワタシ自身も,通勤ラッシュに身を置く必要がなくなり,身体的にも精神的にもずいぶん楽になった記憶があります。
妻の会社でも,当時は週5日のうち4日ほど在宅勤務をしていましたが,仕事自体は特に支障なく回っていたようです。ところが現在では,「やむを得ない事情がある場合に限り在宅勤務を認める」という運用に変わったそうです。同じような会社は少なくないのではないでしょうか。
今回,GMOインターネットグループは,在宅勤務を見直した理由の一つとして「労働生産性の低下」を挙げています。これには少し驚きました。
IT企業は成果物を生み出す仕事が中心ですから,「成果さえ出せれば,どこで仕事をしても同じ」というイメージを持っていたからです。それでも対面勤務へ回帰するということは,人が集まって働くことには,数字だけでは測れない価値があるのでしょう。
また,組織を運営する立場から見れば,「仕事をしている時間」だけではなく,「仕事への向き合い方」や「周囲との連携や調整」も重要になります。
もちろん,在宅勤務だから真面目に仕事をしないという話ではありません。しかし,人は互いの姿が見える環境だからこそ生まれる緊張感や一体感というものも確かにあります。その積み重ねが,組織全体の生産性につながっているのかもしれません。
だからといって,在宅勤務が悪い働き方だとは思いません。通勤時間を有効活用できますし,育児や介護との両立もしやすくなります。体調が万全ではない日でも,自宅であれば仕事を続けられることもあります。
大切なのは,「出社か在宅か」という二者択一ではなく,仕事の内容や目的に応じて,それぞれの良さを上手に使い分けることなのでしょう。
ワタシは現在,行政書士として仕事をしています。
書類を作るだけであれば,自宅で仕事をしていても大きな問題はありません。しかし,相談者のお話をじっくり伺い,表情や雰囲気から本当のお困りごとを読み取るなど,お客さまと直接お会いすることは絶対に必要です。
便利な仕組みは積極的に取り入れるべきです。しかし最後に依頼者の方が求めているのは,パソコンの画面越しのサービスではなく,「この人なら安心して任せられる」という信頼なのだと思います。
どれだけ時代が変わっても,その信頼だけは,オンラインでは完全に置き換えることはできないのではないでしょうか。

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