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EVシフトの揺り戻しを見ながらワタシが考えたこと

先日,ホンダが2026年3月期決算で最大6900億円の最終赤字になる見通しだと報じられました。これは,世界的な電気自動車シフトの流れの中で一気にEVシフトに振り切ったあと,北米向けのEV計画を中止し,巨額の投資をまとめて損失処理したことが主な要因だと言われています。ワタシはこのニュースを見て,「やっぱりな」と感じました。

ここ数年,世界は「EV一色」と言っていい雰囲気でした。欧州では何年までにガソリン車販売を全廃するといった目標が次々に掲げられ,各国政府も補助金や優遇策でEVを後押ししてきました。メディアも企業も政治も,「将来はクルマといえばEVが当たり前だ」という前提で話を進めていたように思います。しかし,現実の需要は,その期待についてこられなくなってきました。

理由はいくつかあります。第一に,EVが依然として高価であることです。バッテリーのコストは思ったほど下がらず,ガソリン車やハイブリッド車との価格差は依然として大きいままです。家計の感覚からすれば,「環境に優しいから」という理由だけで,そこまでの上乗せを受け入れるのはなかなか難しい話です。

第二に,充電インフラの不足と,使い勝手の問題です。自宅に充電設備を設置できる人ばかりではありませんし,外出先での急速充電も,日本を含め多くの国でまだ十分とは言えません。充電に時間がかかること,冬場などで航続距離が短くなる不安もあり,「普段使いにはまだ不便だ」と感じる人が多いのも無理はないと思います。

第三に,補助金頼みの需要の限界です。各国でEV購入補助や税制優遇が縮小されたり打ち切られたりすると,一時的に盛り上がっていた需要は急速にしぼみました。そこに景気減速や金利上昇が重なり,「とりあえず今は様子見でいいか」と考える消費者が増えていったのでしょう。

さらに,中国勢の台頭も大きな要因です。BYDなどのメーカーが安価なEVを大量に投入し,欧米や日本のメーカーは価格競争に巻き込まれました。利益を確保しにくくなり,「EV一本足打法」では会社全体が揺らぎかねないという危機感から,多くのメーカーがハイブリッドやプラグインハイブリッドと組み合わせた複線的な戦略に戻りつつあります。ホンダの撤退劇は,その象徴的な出来事のひとつだとワタシは見ています。

こうして並べてみると,後出しじゃんけんのようになってしまいますが,ワタシはもともとEVには懐疑的なスタンスでした。ハイブリッド車が一定の合理性を持っていることは理解できます。しかし,世界中のガソリン車をすべてEVに置き換える,という構想には最初から無理があると感じていました。インフラ,資源,コスト,どれをとっても,そんなにきれいに切り替わるはずがないと考えていたのです。そもそもシルクロードやアフリカなど,電気のインフラが乏しいエリアでどうやって電気自動車が走れるのでしょうか。

それに,極端な話をすれば,もし本当にガソリン車が完全になくなって,すべての乗用車がEVになったら,原油から精製されるガソリンはどうなるのでしょうか。発電所で燃料を燃やして電気を作り,それをバッテリーに蓄えて走る,という仕組みだけを見ても,「エネルギーの使い方として本当に効率的なのか」という疑問は拭えません。もちろん技術は進歩しますが,それでも「電気にすればすべて解決」という単純な話ではないとワタシは思っています。

こうしたことを考えれば,電気自動車の勢いが一度ピークアウトし,EVシフトが現実的なペースに修正されてきたのは,ある意味で当然の結果とも言えます。理想やスローガンの力で市場をぐいぐい引っ張ることはできますが,最後にクルマを買うのは一人ひとりの生活者です。その人たちの懐具合と生活実感を無視した「きれいな将来像」は,どこかで必ず揺り戻しを受けるのだろうと,ホンダのニュースを見ながらあらためて感じた次第です。

このあたりから先は,「では,これからの自動車は何を目指すべきなのか」「エンジンかEVかという二者択一を超えて,どんな選択肢があり得るのか」という話にもつながっていきそうです。ワタシ自身も,もう少し腰を据えて考えてみたいテーマだと感じています。

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