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ビッグマック指数に一喜一憂しない――購買力平価と,ワタシたちの暮らしの実感

先日テレビを見ていると,ビッグマック指数が取り上げられていました。最近,日本は世界で50位前後だとして,「安く買いたたかれる国になった日本」などとやや刺激的に論じる記事も目にします。

ビッグマック指数とは,世界各国でほぼ同じ品質で販売されているマクドナルドのビッグマックの価格を比較し,各国通貨の「割高・割安」を測ろうとする指標です。これは英国の経済誌エコノミストが1986年に考案したもので,本来は「購買力平価(PPP)」という考え方を分かりやすく示すためのユーモラスな試みでした。

購買力平価とは,「同じモノやサービスは,本来どの国でも同じ価値で買えるはずだ」という発想に基づき,各国通貨の実力を測ろうとする考え方です。もう少しかみ砕いて言えば,「同じ商品をそれぞれの国の通貨で買ったときに,価格が等しくなるような為替レートはいくらか」という理論値を求めるものです。

たとえば,日本でビッグマックが480円,アメリカで5.79ドルだとします。仮に1ドル=160円なら,日本の480円は3ドルに相当します。すると,日本の価格はアメリカよりかなり安いことになります。この差から,「円は理論的には割安だ」といった議論が生まれるわけです。

ワタシが就職した1989年,いわゆるバブル景気の真っただ中にあった日本では,ビッグマックのドル換算価格は2.78ドルでした。当時のアメリカは2.02ドルで,日本はかなり「割高」でした。デンマークやスウェーデンなど日本よりも割高な国はありましたが,日本はかない上位のグループに位置していました。円は強く,日本経済は「飛ぶ鳥を落とす勢い」と言われていました。

ところが現在は,円安の影響もあり,ドル換算では日本のビッグマックはアメリカよりかなり安い水準にあります。数字だけを見れば,「日本は安い国になった」「経済成長に取り残された」といった論調になるのも無理はありません。

しかし,ここで少し立ち止まりたいのです。

為替レートは,貿易収支や金利差,投資マネーの動きなど,さまざまな要因で大きく変動します。ビッグマック指数は分かりやすい半面,あくまで単一商品の価格比較に過ぎません。各国の家賃水準,人件費,税制,社会保障の充実度,サービスの質までは反映していません。

さらに言えば,「ドルで見て安い」ということと,「その国の人が不幸である」ということは,まったく別問題です。

バブル期,日本は豊かだと言われながら,「国は豊かでも国民は幸せではない」といった記事があふれていました。現在は逆に,「失われた30年」「安い日本」と悲観的な言葉が並びます。時代が変わっても,メディアはどこかで「日本は問題だ」と言いたいように見えるのは,ワタシだけでしょうか。

ワタシ自身の生活実感で言えば,最近は確かに物価上昇を感じます。しかし,安全でおいしい食材はふんだんに手に入り,公共インフラは整い,医療や行政サービスの水準も高い。店に入れば,丁寧で質の高い接客を受けることができます。日本人の勤勉さと誠実さが支えるサービスの質は,世界でもトップクラスだとワタシは思っています。

しかもそれらが,相対的に「割安」に享受できるというのは,生活者の立場からすれば必ずしも悪いことではありません。海外旅行に行けば円安を痛感しますが,日本国内で暮らす限り,日々の安心や快適さが急に失われたわけではありません。

経済指標は,国の体力を測る大切な物差しです。しかし,それはあくまで「物差し」であって,「幸せそのもの」ではありません。

ビッグマック指数が上がった,下がったと一喜一憂するよりも,目の前の仕事を丁寧にこなし,地域で信頼を積み重ねることのほうが,ワタシにとってははるかに現実的です。行政書士として日々ご相談を受けていると,経済統計よりも,人と人とのつながりや安心感こそが,暮らしの基盤だと実感します。

円が強いか弱いかよりも,自分の足元がしっかりしているかどうか。
世界ランキングよりも,今日一日を誠実に生きられたかどうか。

ビッグマックの値段は変わります。しかし,地に足のついた暮らしの価値は,そう簡単には揺らぎません。

ワタシは,数字に過度に振り回されることなく,この国の底力と日々の豊かさを信じて,これからも淡々と仕事を続けていきたいと思います。

もちろん,経済の専門的分析は専門家に委ねるべきですが,生活者としての実感もまた一つの真実だとワタシは思っています。

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