叙勲と褒章の季節に思うこと——あのリストの向こう側
4月28日に春の褒章が,そして29日に春の叙勲が内閣より発表されました。ワタシはこの時期になると,サラリーマン時代にやっていた叙勲・褒章に関わる重要な仕事のことを思い出します。
褒章とは,特定分野での顕著な成果や善行に対する表彰です。たとえば紫綬褒章は学術・芸術・スポーツの分野で功績を挙げた方に授与され,黄綬褒章は技術・技能の世界で長年尽力された方が対象となります。また,藍綬褒章は社会奉仕活動への貢献,紅綬褒章は人命救助などの功績,緑綬褒章はボランティア活動の実績に対して授与されるものです。
一方で叙勲とは,国家や社会への長年の功績に対して授与されるものであり,旭日章や瑞宝章などがあります。政治家や,長年公務に携わり社会に貢献された方々が主な対象となります。
褒章は比較的若い方が対象となることもあり,今回の春の褒章では,吉田鋼太郎さんや,フィギュアスケートペアで活躍する三浦璃来さんと木原龍一さん,いわゆる「りくりゅうペア」が紫綬褒章を受章されました。こうした顔ぶれを見ると,制度の厳かさの中にも,どこか親しみを感じる瞬間があります。
実はワタシはサラリーマン時代,この叙勲・褒章に関するある業務を担当していました。春秋の発表時期になると,会社に受章者のリストを入手します。ワタシの役割は,その膨大なリストの中から,自社と関係のある受章者を探し出すことでした。該当者がいれば,会社として祝電やお祝いの対応を行う必要があるため,見落としは許されません。
しかしながら,この作業はなかなか骨の折れるものでした。他部所や関係者から「●●さんが受章された」という情報が入れば助かるのですが,実際にはほとんど手がかりがない状態から探し出さなければなりません。しかも期限は短く,発表から間を置かず対応する必要があります。静かな作業でありながら,独特の緊張感がありました。
それでも,リストを眺めていると,思わぬ楽しみもありました。ある年には,松任谷由実さんが紫綬褒章を受章されており,「おおっ,ユーミンがいる」と思わず心の中で声を上げたことを覚えています。無機質な名簿の中に,自分の知っている名前を見つけると,その一行だけが急に立体的に見えてくるのです。
サラリーマン時代にはさまざまな仕事を経験しましたが,こうして振り返ると,普段の生活ではなかなか触れることのない世界に関わっていたのだと感じます。そして今,行政書士として日々の業務に向き合う中で思うのは,表に出ることの少ない仕事の積み重ねこそが,社会を静かに支えているのだということです。
叙勲や褒章の受章者の方々は,まさにその積み重ねの先に立っておられるのだと思います。そう考えると,ワタシの仕事もまた,誰かの人生や社会の一部を支える小さな礎でありたいと感じます。目の前の一件一件を確実に仕上げていくこと——それこそが,行政書士としての最も確かな“勲章”なのかもしれません。

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