断る勇気と行政書士の責任
ワタシは行政書士として仕事を行っていくにあたり,「ご依頼いただいたお仕事は絶対に断らない」を基本方針として,これまで全力で業務に取り組んできました。
これには,「せっかくお声がけいただいたご縁を無駄にしたくない」という気持ちもありますが,それ以上に「ワタシを頼ってくださった方の期待に応えたい」という強い想いがあるからです。
未経験の業務であっても,十分な調査期間(納期)をいただき,関係法令を念入りに調べ,時には経験豊富な先輩行政書士に教えを請いながら一つひとつ丁寧にこなしてきました。どんなベテランの先生でも「はじめは初心者」です。しっかり準備して誠実に臨めば大概のことには対応できますし,こうして地道に「対応できる業務」を増やし,積み上げて行くことで,専門性を高めることができるのだと思います。
そんなワタシが本日,行政書士になって初めてご依頼をお断りすることになりました。
ご依頼くださったのは,以前お世話になったリピーターのお客さまです。前回とは少し内容が異なるものの,類似の案件でした。「あいはらさんなら,今回も安心して任せられるだろう」と信頼してくださってのご相談だったと思います。
ワタシも大変嬉しく,ぜひお力になりたいとお話を伺ったのですが,一つだけどうしてもクリアできない壁がありました。それは「受任から提出までの期限が圧倒的に短すぎる」ということでした。
その業務は本来,相応の準備時間と精緻な調査を要するものです。特に,経験の浅いワタシの場合,一層余裕を持ったスケジュールで進める必要がありました。それ単体の業務であれば,他を調整して急ぎの体制を組むこともできたかもしれません。しかし,あいにく現在は他の業務も集中しており,時間的にも精神的にも限界に近い状態でした。
もし,軽はずみに引き受けて,中途半端な仕事になり「虻蜂取らず」になってしまっては大変です。責任を持って完璧な業務を遂行できない可能性が高いと判断し,ワタシは泣く泣くお断りする決断をしました。
ワタシの現在の状況と理由を丁寧にお伝えし,お詫び申し上げました。お電話を切った後,「これでこの方からは,もう二度とお仕事の依頼はいただけないかもしれないな…」と胸が痛みました。
ですが,もし仕事ほしさに無理なお約束をして期限内に書類を完成させられなかったら,お客さまに莫大なご迷惑と損失をお掛けすることになります。そして,これまで築いてきたワタシの信頼も一瞬で崩れ去ってしまいます。どれほど辛くても,ここは「お断りする」のがプロとしての責任でした。
ふり返ってみると,今回「お断りする勇気」を持てるようになったのは,ワタシも行政書士として3年目を迎え,少しずつ全体の状況を見通す見識や責任感が身についてきたからかもしれません。開業したばかりの頃であれば,ただ「仕事が欲しい」という一心で,後先考えずに飛びついていた可能性もあります。
行政書士の本当の価値は,単に書類を作ることや何でも受任することではなく,「お客さまの権利と利益を,最後まで責任を持って守り切ること」にあります。時にはご期待に添えない決断をすることも,プロとしての誠実さの表れなのだと実感しました。
今回の件は非常に残念で心残りですが,この苦い経験を糧に,どんな時でも余裕を持って笑顔でお引き受けできるよう,事務処理能力や知識という「自身の剣」をいっそう磨いてまいりたいと思います。

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