切れない包丁から学んだこと~士業としての切れ味を取り戻す~
ワタシは日頃からよく厨房に立ちます。
料理が好きだということもありますが,ワタシは基本的に自宅で仕事をしているため,昼食は自分で作ることが多く,夕食も疲れて仕事から帰ってくる妻に代わってワタシが担当することが少なくありません。
最近は「家事の分担」が当たり前のように語られますが,我が家の場合は分担というよりも,お互いの得意分野を活かして役割を担っているという方が近いかもしれません。料理については,ワタシが担当するのが一番効率的で,お互いにとっても都合が良いのです。
先日,昼食に野菜炒めを作っていたときのことです。
キャベツを切っていて,なんとなく包丁の切れ味が落ちていることに気付きました。そう思いながら芯の部分に刃を入れた瞬間,包丁がつるりと滑り,左手の指に当たったのです。「ヒヤリ」としました。幸いにも指を切ることはありませんでしたが,一歩間違えば怪我をしていたかもしれません。
料理をする方ならご存じだと思いますが,実は切れる包丁よりも切れない包丁の方が危険だと言われます。切れ味が悪いと余計な力が入り,刃が滑ったり,思わぬ方向へ動いたりするからです。
「これはいかん」
そう思ったワタシは,昼食の後に包丁を研ぐことにしました。
我が家には普段使いの万能包丁が二丁と,刺身用の柳刃包丁が一丁あります。どれも職人さんが使うような高級品ではありませんが,家庭用としては少し贅沢な。鋼を使ったしっかりした包丁です。
ステンレス包丁のような手軽さはありません。少し手入れを怠ると錆も出ます。しかし,その代わりに素晴らしい切れ味があります。
ワタシは中砥石で刃を整えた後,仕上砥石で丁寧に研ぎ上げます。
しばらく砥石と向き合い,三丁の包丁を順番に研いでいきました。
研ぎ終わった後,野菜くずで試し切りをすると,刃は驚くほど滑らかに入っていきます。
「これならしばらく気持ちよく料理ができそうだ」
そう思った瞬間,ふと別のことが頭に浮かびました。
自分自身の切れ味は大丈夫だろうか。
行政書士も海事代理士も,資格を取ったら終わりではありません。
法令は改正されますし,社会の仕組みも変わります。技術は進歩し,人々の価値観も変化していきます。
行政書士倫理綱領には「人格を磨き,良識と教養の陶冶を心がける」とあります。また,海事代理士の綱領にも,専門知識を涵養し,法令と職務に精通することが求められています。要するに,「勉強を続けなさい」ということです。
ところが,人間は忙しくなると目の前の仕事をこなすことに追われがちです。
ワタシ自身も,日々の業務に没頭するあまり,「後で勉強しよう」と思ったままになっていることがいくつもあります。
胸に手を当ててみると,勉強し直したい分野や,改めて確認したい制度が次々と思い浮かびました。
包丁は,切れ味が落ちても砥石で研げば元に戻ります。
しかし,人間の知識や感覚は,放っておいても自然に研ぎ直されることはありません。自ら学びブラッシュアップする必要があります。
だからこそ,少しずつでも学び続けることが大切なのだと思います。
包丁を研ぎ終えた後,台所で光る刃を眺めながら,ワタシもまた専門家としての切れ味を磨き続けようと思いました。
包丁も行政書士も海事代理士も,良い仕事をするためには,日々の手入れが欠かせないようです。

コメントを残す