雑食系行政書士から専門家へ――駆け出し行政書士の現在地
ワタシは現在,仕事をするに当たって「依頼のあった仕事は基本的に全てお受けする」ことを基本方針にしています。
理由は二つあります。一つは,ワタシのような駆け出しの行政書士に仕事をご依頼いただけること自体が,本当にありがたいことだと感じているからです。自分で「大丈夫」と判断した仕事であれば,全力でお受けするのが当然だと思っています。もう一つは,せっかくこれまでのサラリーマンから行政書士になったのですから,この仕事の世界をできるだけ広く見つめてみたいという思いからです。
実際,開業してからお受けした業務は多岐にわたります。相続,遺言書作成のサポート,後見関連業務,建設業許可申請,自動車・オートバイの登録,農地転用,契約書の作成・監修,さらには行政書士業務ではありませんが手紙の代筆まで,本当にさまざまです。
行政書士を志した当初は,「終活や成年後見・任意後見,申請取次を中心にやっていこう」と考え,それなりに準備もしてきました。しかし,思い描いたとおりの業務が自然に舞い込んでくるわけではありません。現実は,いただいた業務一つ一つに誠実に向き合いながら,自分の得意分野を探している段階です。
そのような状況もあり,ワタシは自分のことを「雑食系行政書士」と称しています。自己紹介でこの肩書きを使うと,たいてい会場に笑いが起こり,顔と名前を覚えていただけるという副次的な効果もあります。
ところが先日,ある集まりで「ワタシは雑食系行政書士として……」と自己紹介したところ,大御所の先生から,「雑食系というのはあまり望ましくない。早く専門を定め,内容を深めていくべきだ」との苦言をいただきました。
おっしゃることは,まさに正論です。専門性を磨き,その分野で信頼を築くことが王道であることに疑いはありません。ただ,駆け出しの身としては,「それができるなら,とっくにそうしている」というのが本音でもあります。率直に言えば,開業間もない段階で仕事を選り好みできるほどの余裕はないのです。
もっとも,ワタシは本当に何でもお受けしているわけではありません。ワタシの倫理感に照らし不適切であると考えるものや,自分を安売りするようなご依頼については,きちんとお断りしています。その一方で,「できるだけ多くの業務を経験したい」という好奇心が背中を押し,「まずはやってみます」と申し上げることが多いのも事実です。
とはいえ,少しずつ自分なりの得意分野が見え始めているのも確かです。
その一つが,契約書の作成・監修です。ワタシはかつて東北電力で勤務し,長年,火力発電所,原子力発電所で使用する燃料の調達業務に携わってきました。石油元売り会社や商社などと売買契約書や役務契約書などを何度も締結し,英文・和文を問わず,売る側・買う側双方の立場で契約書を起案してきた経験があります。この分野では,「契約締結のプロ」として一日の長があると自負しています。実際にご依頼いただいた案件でも,依頼者の意向を丁寧に反映させた契約書を作成し,ご満足いただいています。
もう一つは,太陽光発電所建設に伴う農地転用申請です。この分野については,開業当初はまったくの素人でした。しかし,いわば業務の荒海にもまれながら5件,10件と申請を重ねるうちに,次第に要点が見えてきました。現在では,申請先の担当者と適切に自信を持って協議を重ねながら,筋の通った申請ができるようになってきたと感じています。
太陽光農地転用業務におけるワタシの強みは二つあります。一つは,東北電力時代に身につけた電気工作物や系統連系に関する基礎知識です。ワタシは技術職ではありませんでしたが,新入社員当時に営業所で電気使用申し込みの受付業務を経験し,電力設備に関する基本的な理解を培いました。もう一つは,資料作成への徹底したこだわりです。審査をする方が読みやすく,理解しやすい資料を作ることを常に意識しています。これは会社員時代に厳しく鍛えられた部分でもあります。
さらに,開業当初から取り組んでいる相続業務や,「おひとりさま」を支える後見関連業務についても,今後いっそう専門性を深めていきたいと考えています。
大御所の先生がおっしゃったように,近い将来「ワタシは○○が専門です」と胸を張って言える行政書士になりたいと思っています。しかしそれは,名乗ることで得られるものではなく,日々の実務の積み重ねの中から自然に形づくられていくものだとも感じています。
「雑食系行政書士」の日々を過ごしつつも,契約書作成では長年の実務経験という確かな土台があります。農地転用においても,サラリーマン時代に身につけた電気に関する専門知識と実務で磨いてきた実践知があります。相続や後見の分野についても,着実に経験を重ねています。
幅広く経験する時期は決して遠回りではなく,将来の専門性を支える基礎体力だとワタシは考えています。目の前の一件一件に誠実に向き合いながら,自然と「専門」と呼ばれる領域を形づくっていく――その姿勢でこれからも歩んでまいります。

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