幸福な子どもたちは,なぜ故郷を出ていくのか
2025年度の政府の調査で,秋田県の子どもたちの幸福度が全国1位になったそうです。一方で,秋田県内の全日制高校を卒業した生徒の半数以上は,進学や就職を機に県外へ出て行くといいます。
「幸福で豊かな地元で幼少期を過ごした秋田の子どもたちは,なぜふるさとを離れ,東京などの大都市へ出て行くのか」
そんなことを論じたエッセイをネットで読みました。
書かれていることは事実ですし,ワタシも「なるほど」と思いました。
幸福感一位の秋田の子どもたちは、なぜ秋田を出ていくのか | アゴラ 言論プラットフォーム
ワタシはサラリーマン時代,能代と秋田の火力発電所に3年ずつ,合わせて6年間勤務し,単身赴任をしていました。
その頃の印象では,社宅の子どもたちはもちろん,近所ですれ違う子どもたちも,ニコニコしながら元気に挨拶をしてくれました。きちんと躾けられた,礼儀正しい子どもたちが多かったことを覚えています。
学力についても,ワタシが秋田に赴任していた頃から全国上位の常連でした。
秋田県外から転勤してきた同僚のお父さん,お母さんたちが,
「秋田は子どもの教育レベルが高いですね」
と話していたことも,今でも記憶に残っています。
なのに,そんな子どもたちが高校を卒業して県外へ出て行く。
これは,ある意味で当然なのかもしれません。
秋田には,せっかくきちんと育てられ,高い能力を身につけた子どもたちを受け止める「受け皿」が十分にないからです。
もちろん,国立大学の秋田大学がありますし,国際教養大学という,実業界から非常に高い評価を受けている大学もあります。
しかし,東京などの大都市圏に比べれば,大学の選択肢は圧倒的に少ない。
就職先についても同じです。
地元にも,優良企業はありますが,さまざまな業種の大企業が集まり,若者が自分の能力や希望に応じて仕事を選べる東京とは,どうしても差があります。
そう考えると,全国で通用する能力を身につけた若者が,「自分の力を試してみたい」と故郷を飛び出していくのは,むしろ自然なことなのだと思います。
そして,ここには地方にとって少し皮肉な構造があります。
地方が時間とお金をかけて子どもたちを育てても,大学や就職先は大都市に集中している。その結果,優秀に育った若者を大都市が吸収してしまう。言い方は悪いですが,大都市が地方の「人材育成の果実」を搾取しているようにも見えます。
もちろん,だからといって東京に大学や企業を置くな,という話ではありません。
現実問題として,今すぐ全国の地方都市に東京と同じような大学や企業をつくることは難しいでしょう。だからこそ,時間をかけて,地方にも高校卒業後の若者が「ここで頑張ってみよう」と思える受け皿を少しずつ作っていく必要があるのだと思います。
これは,大学,企業,行政,地域社会という主体それぞれがバラバラに頑張るのではなく,地域全体として若者が学び,働き,生活できる環境をつくっていく。
これは一朝一夕にはできません。
しかし,地方の人口減少を本気で止めようとするなら,子どもを育てるだけではなく,「育った子どもがその後も暮らせる場所」をつくるところまで考えなければならないのではないでしょうか。
そう考えると,これは秋田だけの問題ではありません。ワタシが暮らす宮城県を含め,地方都市の多くが抱えている問題です。
そして,ここまで考えて,ワタシは自分の仕事にも少し似ているなと思いました。
行政書士の仕事も,単に書類を作って終わりではありません。
農地転用にしても,事業を始めるための許認可にしても,相続や会社設立にしても,「その人がこれからどうしたいのか」という目的があって,そのために必要な手続きを一つずつ整えていきます。
地方の未来も同じなのかもしれません。「若者が地方に残ってほしい」と願うだけでは,なかなか残ってくれません。残ってもらうための仕組みを,地道に一つずつ整えていく。そんなことを国,当事者一体で取り組んでいかなければなりません。

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