ネットの「ありがちな話」に,ちょっと待った
最近,ネットを見ていると,似たようなトピックを頻繁に目にするようになりました。特定のサイトなどでよく見かけるのですが,ワタシがよく目にして,特に気になるのは,大きく三つのパターンです。
一つ目は,定年退職にまつわるエピソードです。
会社でモーレツ社員として働き,営業部長にまで上り詰めた男性。定年を迎え,「これからは妻とゆっくり旅行でも楽しもう」と思って帰宅したところ,妻から突然,離婚を告げられるという話です。
「あなたと旅行なんて,まっぴらです」
「定年になって一日中家にいられたら,息が詰まります」
そんなセリフまで登場します。
それにしても,なぜこういう話では,離婚されるのが,必ずと言っていいほど「営業部長」なのでしょうか。
二つ目は,息子夫婦と孫にまつわるエピソードです。
盆や正月になると,息子夫婦と孫が帰省してきます。家の中は賑やかになる一方で,料理や布団の準備,孫への小遣い,さらには教育費の援助など,何かと出費がかさみます。年金暮らしの夫婦には,これが大きな負担となり,「もう帰省してこないでほしい」と思うようになる。ついには,実際に息子夫婦との関係を断ってしまう。
そんなストーリーです。
三つ目は,新幹線や飛行機の座席をめぐるトラブルです。
指定席に座ろうとしたら,知らない人が座っている。
「友人と一緒に座りたいので,席を替わってください」
「子どもが窓側が好きなので,交換してもらえませんか」
といった具合に,かなり強引な要求をされるという話です。
確かに,ありそうな話ではあります。ただ,ワタシは実際にこんな場面に遭遇したことがありません。
一つ目の「定年退職したら妻から離婚を切り出された」という話にしても,「これ,いつの時代の話なのだろう」と思ってしまいます。
ワタシが子どもだった昭和の高度経済成長期には,たしかに「仕事一筋で家庭を顧みない夫」という話を,ちらほら耳にした記憶があります。しかし,少なくともワタシ自身やワタシの周囲では,定年を迎えた途端に夫婦関係が破綻した,という話を身近に聞いたことはありません。
二つ目も三つ目も,いかにも「ありそう」ではあります。
でも,どこか話が出来すぎているのです。
特に新幹線や飛行機の座席をめぐるトラブルなどは,もし本当に困ったことになれば,車掌さんや客室乗務員に相談すれば済む話です。
それをわざわざ知らない人同士で延々と揉め続け,最後には「スカッとする結末」が待っている。
どうも,ネットで読まれることを意識して作られたストーリーに見えてしまいます。
もちろん,本当にあった出来事もあるのでしょう。
しかし,ワタシは最近,こうした「いかにもありそうな話」を見かけると,少し距離を置いて見るようになりました。
ネットの記事は,面白ければ面白いほど,つい続きを読みたくなります。
けれども,その時間が積み重なると,案外大きな時間になります。
だったら,ワタシは本を一冊読むか,仕事を一つ片付けるか,妻と話でもしていたほうがいい。
何よりワタシ自身,定年退職を迎えてから離婚を言い渡されることもなく,むしろ今の仕事を続けるワタシを家族が支えてくれています。
仕事で疲れて帰ってきても,「今日はどうだった?」と声を掛けてもらえる。
ワタシが新しいことを始めても,「やってみたら」と背中を押してもらえる。
そんな家族がいてくれることを,ワタシはありがたいことだと思っています。
そして,行政書士という仕事をしていると,家族や人との関係が,決してネットの記事に出てくるような単純なものではないことを実感します。
相続や遺言,成年後見などの相談を受けていると,家族には家族にしか分からない事情があります。
「親子だから仲がいい」
「兄弟だから話し合えば分かる」
「長年連れ添った夫婦だから大丈夫」
そんな簡単な話ではありません。
だからこそ,ワタシはネットの「ありがちな話」を鵜呑みにするのではなく,目の前にいる人の話をきちんと聞くことを大切にしたいと思っています。
……とはいえ,ネットの「定年退職したら妻から離婚を告げられた」という話を読んでいると,ワタシも一つだけ気をつけなければならないことがあります。
定年後も妻に嫌われないようにすることです。
そのためにも,今日も仕事を頑張ります。また,料理や片付けなど,家事の中で,ワタシでもできることで家の中にも居場所を作りたいと思います。
そんなことを考えながら,ワタシは今日も2階の事務所で仕事をするのでした。

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