結局いくらかかるの?——そのお答えが一言で済まない理由
ワタシは日々の業務でお客さまから相談を受けています。また、行政書士会や有志メンバーで「無料法律相談会」等を行うこともありますが、そういった場では、やはり皆様の関心が高いのは「相続」や「遺言」、そして「自分が認知症になってしまったらどうなるのか」といったご不安です。そして皆様の一番のご関心は、「これをお願いするといくらかかるのか」という報酬=お金の問題です。相談会の場では「それをお願いしたら、いくらかかりますか」というご質問が非常に多く、それは無理からぬことだと思います。
行政書士の取り扱う案件は非常に幅が広く、継続的にお付き合いいただいているお客さまもいらっしゃる一方で、相続など、ご自身が突然直面した問題についてご相談される方も多くいらっしゃいます。遺言なども同様ですが、人生の中で一度あるかないかの未知の問題について士業に依頼する際には、手続きへの不安に加えて費用面の負担も重なり、大きなご不安を感じられるものと思います。ですから、費用についてご心配されるのは当然のことです。
ところが、「いくらですか」と聞かれて、その場で明確にお答えすることはほとんどありません。行政書士は、行政書士法第10条の2第1項により、「行政書士は、その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならない。」と定められており、ワタシも事務所への掲示とホームページへの掲載を行っています。しかし、この報酬表をご覧いただいただけでは、「自分の場合はいくらくらいかかるのか」という点までは分かりにくいと思います。これは、同じ相続対応業務であっても、相続人の数や関係性、財産の内容や規模などによって、業務の手間や責任の重さが大きく異なり、一概には言えないからです。
ワタシが報酬を決定する際には、まずお客さまから事情をお聞きし、対応に必要となる大まかな時間を見積もります。そして、それに自分の時間あたりの報酬(いわば時給)を掛け合わせて基礎となる金額を算定し、さらに個別事情や一般的な相場も踏まえて最終的な報酬額を提示しています。もちろん、その算定方法についてもご説明し、ご納得いただいたうえで業務をお引き受けするようにしています。滅多にあることではありませんが,業務の途中で事情が変わり、報酬額の見直しが必要になる場合にも、その都度ご説明し、ご理解をいただくことを基本としています。
行政書士の仕事の多くは、案件ごとに内容が異なる「オーダーメイド」の対応が必要な業務です。そのため、単純な金額だけで比較することが難しい側面があります。継続的にご依頼をいただいているお客さまについては協議のうえで報酬を定めることもありますし、知人や友人からのご依頼については、わずかではありますがお値引きをさせていただくこともあります。一方で、「他ではもっと安い」といった、いわゆる相見積もりによる単純な値引き交渉については、個々の事情を踏まえた適切な業務提供が難しくなるため、「それではそちらにご依頼ください」とお伝えすることにしています。
一般のお客さまが行政書士に仕事を依頼する場面は、人生の中でも大きな節目であることが多く、決して頻繁にあるものではありません。ワタシはそうした場面において、お客さまに寄り添い、不安を少しでも和らげ、信頼していただいたうえで、納得のいく報酬をお支払いいただき、責任ある質の高い仕事を提供したいと考えています。報酬の掲示は義務としての形式にとどまらず、その中身まで丁寧にご説明し、ご理解いただくことこそが、行政書士としての大切な役割だと考えています。

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