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値下げの甘言と,問い直す力

昼間,自宅で仕事をしていると,自宅で利用しているインターネット会社(通信会社)を名乗るところから電話がかかってきました。受話器の向こうにいたのは若い男性で,いかにも電話営業といった口調でした。

彼はこう切り出しました。「長年インターネットをご利用のお客さまについて,月額料金を2,000円値下げさせていただきます」とのことでした。対象は,子どもが独立したような夫婦世帯で,動画視聴も概ね1日2時間程度という,いわば“使用量の少ない”家庭だと言います。

ワタシはすぐにいくつか質問をしました。「動画を見る時間が増えた場合,ペナルティーはありますか」「1日や1か月単位で利用制限はありますか」と。返ってきた答えは「大丈夫です」といいつつも曖昧なものばかりでした。値下げのためには,現在のモデムを使用量の少ない方向けのものに交換する必要があるとも言われました。

「何かおかしい」と感じながらも,そのときのワタシは仕事の途中で忙しく,早く電話を切りたい気持ちが勝ってしまいました。こうした営業電話に共通するのは,「聞かれたことに正面から答えない」「説明が具体性を欠く」という点です。それでも,その場を早く収めたいという心理が働き,了解してしまったのが正直なところです。

ところが,手続きはそれで終わりではありませんでした。後ほど別の担当者から確認の電話をするとのことでした。「言った,言わない」を防ぐためだと言います。ほどなく別の人物から電話がありましたが,こちらもまた要領を得ない説明に終始しました。

さすがに違和感が強くなり,ワタシは単刀直入に尋ねました。「こちらから頼んだわけでもないのに,使用量の少ない世帯を見つけて固定料金を値下げするというのは出来過ぎています。普通の企業なら,メリットもなく値下げはしません。外部に委託してまで勧誘する以上,御社に何らかの利益があるはずです。値下げに応じた場合のデメリットを具体的に説明してください」と。

すると,ようやく本音が出ました。「月に20GB以上使用すると速度が落ちます」とのことでした。つまり,実質的には通信制限付きのプランへの変更です。動画視聴が増えれば,快適な通信環境は失われます。おそらくは,通信設備の容量が逼迫しているため,使用量の少なそうな世帯を“狙い撃ち”して負荷を下げようという意図なのでしょう。

幸いにも,ワタシは途中で違和感に気づき,問い詰めたことで本質にたどり着きました。しかし,もし忙しさに流されて確認を怠っていたら,知らぬ間に条件の悪い契約へ変更していたかもしれません。

こうした電話は,形を変え,内容を変え,何度でもやってきます。重要なのは,相手の土俵に乗らないことです。甘い言葉や限定感に急かされず,事実関係を一つ一つ確認し,自分のペースで判断することです。「今すぐ」「あなただけ」という言葉が出てきたときほど,立ち止まる勇気が求められます。

契約とは,双方の合意で成立する法律行為です。そして,今回のように、書面によらない、口約束でも成立します。だからこそ,内容を十分に理解しないまま応じることは,自ら不利な立場に身を置くことになりかねません。

ワタシたち行政書士は,契約書の確認や内容の精査,消費者契約に関する相談対応を通じて,こうした「見えにくい不利益」を明らかにするお手伝いができます。また,高齢者世帯に対する見守り契約や,トラブル予防のためのアドバイスも重要な業務の一つです。甘い言葉に惑わされず,自分の意思で選択できる社会を支えることも,行政書士にできる大切な役割だとワタシは考えています。

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