内館牧子氏の訃報に接し思うこと
脚本家であり,女性として初めて大相撲の横綱審議委員会委員を務められた内館牧子氏が,12月17日,77歳で亡くなられました。報に接し,驚くと共に,在りし日の姿が頭に浮かんできました。
内館氏は,三菱重工のOLを経て脚本家へ転身し,トレンディードラマや,NHKの連続テレビ小説「ひらり」,大河ドラマ「毛利元就」など,数多くの作品を手がけられました。
しかし正直に申し上げますと,ワタシはあまりテレビドラマを見る習慣がなく,これらの代表作についても拝見したことがありません。脚本について語れる立場にはないのですが,それでも当時,OLから転じた「売れっ子脚本家・内館牧子」という強い印象だけは,はっきりと心に残っています。
一方で,週刊誌や新聞でたまに目にするエッセイやコラムについては,折に触れて読んでいました。ワタシは熱心な愛読者というほどではありませんが,それでも独特の切り口と,歯切れのよい言い回し,そして少し皮肉を含みながらも温度のある文章に,いつも「面白い方だな」と感じていました。
ドラマより活字で触れる内舘氏――ワタシにとっては,その印象が強く残っています。
そして何より,ワタシが内館氏について真っ先に思い浮かべるのは,相撲への深い関わりです。2000年から10年間,横綱審議委員を務められ,大阪府の太田房江知事が大阪場所で優勝力士の表彰を土俵上で行うことを希望し,日本相撲協会が拒否した際にも,「伝統を守るのが当然の判断」と毅然として協会の決定を支持されたことが印象に残っています。
さらに,その後は東北大学大学院に入学し,大相撲の女人禁制について研究を続けられました。
ワタシは当時,通勤時間帯の仙台市・青葉通から東北大学に向かう道で,何度か内館氏の通学シーンをお見かけしたことがあります。暑い日でもタクシーを使わず,汗をぬぐいながら,右手には資料がぎっしり詰まっていそうな大きなバッグを抱えて楽しそうに,いそいそと歩く姿を今でもはっきり覚えています。
後に内館氏は東北大学相撲部の監督に就任し,物心両面で学生たちを支えたと聞いています。特に,学生たちに対しては「恋愛指南」までしていたようで,テレビで見たワンシーンが忘れられません。
宴会の席で,内館氏が
「いい? 女は(真面目な男よりも),悪い男が好きなのよ」
と,トレンディードラマを数多く手がけた“恋愛のプロ”らしい言葉で学生に語りかけ,勉強一筋できた東北大の学生たちが目を白黒させている――
その微笑ましいやり取りに,思わず笑ってしまいましたし,どこか温かい気持ちにもなりました。
人は誰でも,いつか最期の時を迎えます。それは頭では分かっていても,今の時代に77歳での旅立ちは,やはり早すぎると感じてしまいます。まだ語ってほしいことが,まだ書いてほしい言葉が,たくさんあったように思えてなりません。
心よりご冥福をお祈りいたします。合掌。
※本記事は行政書士の仕事を離れ,私的な思い出・所感を綴ったエッセイです。

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