思いやりと“目線”の距離 ― 徳島市の出来事から学んだこと
徳島市の職員が,生活保護の申請者・受給者など生活に困っている方々に対し,賞味期限の切れた災害備蓄食品を配布し,「体調が悪くなった場合は自己責任とする」という内容の同意書まで書かせていた――そんなニュースが報じられました。
報道によれば,2023年5月から2025年12月1日までの間に,59人の生活困窮者へ,備蓄用のパンやアルファ米・水など,約1100点が配布されていたとのことです。マスコミなどからの指摘を受けて,徳島市は同意書の使用と賞味期限切れ食品の配布を中止しました。
賞味期限というのは「製造者が,おいしく食べられると判断する期間」であり,期限を過ぎたからといって直ちに食べられなくなるものではありません。ワタシ自身,冷蔵庫の中で見つけた賞味期限切れの食品を「まだ大丈夫かな」と判断して食べてしまうこともあります。皆さんにも思い当たることがあるのではないでしょうか。きっと徳島市の職員の方々も最初は「まだ食べられるものだから,少しでも足しになれば」という気持ちで行動したのだろうと思います。
しかし,それでもこの対応は,絶対にやってはならないことだったとワタシは感じます。
日本国憲法25条では,すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利が保障されています。これは恩恵として与えられるものではなく,生まれながらに有している権利です。誰もが,病気や怪我,さまざまな事情で働けなくなる可能性があります。生活保護は,そうしたときに命と暮らしを守るセーフティーネットであり,ワタシ自身だって,いつお世話になるかわからない制度です。
本来,行政は「困っている人を支える側」であり,そこに上下関係があるはずではありません。ところが今回の対応は,「助けてあげるから,何かあっても自己責任で」という,ほんの少しだけ視線が上からになってしまったのではないか――ワタシは,そんな印象を受けました。
ワタシがコレまでお世話になってきた会社でも,非常食として備蓄していた食品のうち,消費期限が近づいたものを福祉団体へ寄付する取り組みがありました。ただ,これはあくまで「期限内の食品を,早めに食べてください」と説明した上でお渡しするものです。今回のように,期限切れのもの,場合によっては1年以上経過した食品を配布するのとは事情が異なります。
開業間もないワタシにはまだ経験がありませんが,行政書士の仕事の一つとして,生活保護など生活に困っている方へのお手伝いがあります。また,これとは少し事情が異なりますが,ワタシはお体が不自由な「おひとりさま」の日常生活をお手伝いする仕事に関わっています。
その際,ワタシが常に意識しているのは,「委任者ファースト」であることです。
支援する立場だからこそ,気づかないうちに上から目線になってしまう危険があります。今回の徳島市の出来事は,ワタシ自身の仕事ぶりを振り返る大きなきっかけになりました。
支える側と支えられる側――その関係は,本来対等であるはずです。
困っている人のすぐそばに寄り添い,「同じ目線」で考え,「同じ歩幅」で歩くこと。
行政書士として,そして一人の人間として,初心を忘れず,今後も依頼者の方の立場に立った支援を続けていきたいとあらためて心に刻みました。

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