国勢調査から見えてくる日本の姿と行政書士の役割
国勢調査は,5年に一度,全国民を対象として実施される大規模な国家調査です。人口や世帯の構成,就業の実態や住居環境を明らかにし,その結果は,国や地方自治体の政策形成に大きな影響を与えます。単なる数値の収集にとどまらず,日本社会の未来像を形づくる基盤を提供する極めて重要な施策です。
今の日本が直面しているのは,少子高齢化の進行,都市部への人口集中,そして地方の過疎化という三重苦ともいえる課題です。今回の国勢調査では,これらの傾向がさらにどのように進展しているのか,あるいは地域特性に即した変化が浮き彫りになるのかが明確になるでしょう。国勢調査はまさに「現在の我が国を映し出す鏡」であり,将来の進路を照らす「道しるべ」でもあります。
調査方式も時代とともに改善されています。今は,日本語が達者ではない外国人住民がでも回答しやすいよう,多言語での対応が整備されています。しかし一方で,日本人とは異なる国民性を持つ外国人の方々が,果たして設問に忠実かつ正確に回答してくれるのだろうか,という不安もワタシにはあります。文化的な「ざっくりとした感覚」でデータの正確性を影響がないか,そこは今後の課題と言えると思います。
ちなみに,今回の国勢調査票はワタシの自宅にも配布されました。提出方法は紙だけでなく,インターネットからも選択できることが示されており,ワタシはスマートフォンでの回答を選びました。実際に操作してみると,ごく簡単な入力作業で,ものの5分ほどで完了しました。国勢調査という従来「大掛かり」な印象のあった手続きが,ICTの活用でここまで手軽になるのかと,利便性の向上を実感しました。ネットからの入力を選択する方が増えれば,おそらく調査の集計も大幅に省力化できるはずです。
このような,ICT技術の進歩は,行政書士としてのワタシにとっても大きな示唆を含んでいます。来年1月に施行される改正行政書士法では,行政書士に対してこれまで以上に情報通信技術への理解と活用が求められることになります。単に法律や制度に精通しているだけではなく,デジタル技術を自在に扱い,依頼者へ円滑にサービスを提供できることが強く期待されているのです。だからこそ,ワタシ自身も今回の国勢調査のようなオンライン手続きを通じて実際に感じた利便性を糧にし,日々の業務に役立てるためICT知識を学び直し,ブラッシュアップを図っていく必要があると痛感しています。
そして,国勢調査が明らかにする社会的変化の延長線上に,行政書士としての具体的使命があります。高齢化が一層進めば,遺言作成や相続手続き,成年後見制度の利用が増えます。地方の過疎化や都市部過密は,空き家や土地利用の問題として現れます。外国人の増加は,在留資格や労務管理の支援を不可避にします。それらはいずれも制度と生活を結びつけ,実務を通してお客さまを支える役割を担うワタシの仕事に直結しています。
国勢調査が見つめるのは「数字としての日本社会」ですが,行政書士が寄り添うのは「数字の向こうにいる一人ひとりの生活」です。法務の専門家として,そして社会の架け橋として,この調査の結果が描く未来を生活実感に即したかたちで支え続けたい――それが行政書士としてのワタシの信念であり決意です。

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