新米の季節に寄せて──食卓に戻った「ひとめぼれ」の幸せ
異常な猛暑に見舞われた今年の夏も,ようやく終わりが見え始め,少しずつ秋の気配を感じるようになりました。朝晩の空気がひんやりとし,虫の声が耳に届くこの頃,近所のスーパーに今年の新米「ひとめぼれ」が並びました。
ここ一年ほど,「米不足」の不安が広がり,通常のお米の価格が高騰する事態となりました。政府は緊急対策として「備蓄米」の放出を行い,流通を安定させようとしましたが,店頭では5キロで4000円近い価格が続き,平成5年の「平成の米騒動」を思い起こさせるような状況でした。あのときは冷害による大凶作が原因でしたが,今回は猛暑や天候不順,さらには輸送コストの上昇などが複合的に影響しているようです。
そんな中,ようやく新米が店頭に並び始めたことに,ワタシは心からうれしく思いました。外食チェーンなどで食事をするたびに,「お米の味が落ちたな」と残念に思うことが多かっただけに,今年の新米の登場は本当にうれしい出来事です。
我が家では,さっそく「新米祭り」を開催しました。これは毎年の恒例行事で,買ってきた新米をまず神棚にお供えし,自然の恵みと農家の皆さんへの感謝を申し上げます。その後,炊きたてのご飯を囲み,梅干し,昆布,おかか,鮭,たらこなど,いわゆる「メシの友」を並べて,冷や酒とともに味わうのです。
炊きたての新米は,おかずなしでも十分に美味しく,おかずとの相性も抜群です。おかずとともに頬張ったご飯を,冷えたお酒で流し込む瞬間は,まさに至福のひととき。普段はダイエットのためにご飯を控えめにしている私ですが,この日ばかりは特別です。夫婦二人で3合のご飯をぺろりと平らげ,幸せな時間を過ごしました。
炊きたてのご飯の香りが台所に広がると,思わず「今年もありがとう」と声に出してしまいました。誰も聞いていないのに,つい言いたくなるのです。そんな自分の癖に,少し照れながらも「やっぱりご飯は日本人の心だな」としみじみ思いました。
こんなにも美味しいご飯を,普通に食べられることのありがたさを,改めて実感しました。
とはいえ,今の日本は物価上昇の波に揺れ,多くの方が生活のやりくりに苦労されています。我が家もその例外ではありません。お米の価格が高止まりしている現状は,決して楽観できるものではなく,誰もが安心して食卓にご飯を並べられる日常が戻ることを願うばかりです。
それでも,こうして新米が店頭に並び,炊きたての香りが台所に広がるだけで,心がふっと軽くなります。「ひとめぼれ」の名の通り,一口で恋に落ちるような美味しさに,今年も出会えたことに感謝しています。

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