誰でも最初は「初心者」なんです
皆さんは,新入社員として初めて仕事をしたときのことを覚えていますか。
先輩に手ほどきを受けながら恐る恐る書類を作成したり,にわか仕込みの商品知識を詰め込んでお客さまの前に立ち,真新しい名刺を差し出して挨拶したり。緊張と不安が入り混じったあの感覚を思い出す方も多いのではないでしょうか。
還暦を過ぎたワタシにも,そんな新入社員時代の記憶があります。今から35年以上前,平成元年にワタシは東北電力盛岡営業所のお客さまセンターに配属されました。そこは,電気の使用開始や廃止,アンペア変更,停電や故障の問い合わせ,さらには苦情の電話まで直接受け止める大変な職場でした。
配属初日,朝のミーティングで挨拶を済ませた直後から「戦闘開始」です。電話の内容はよく理解できず,盛岡の南部弁も聞き取れません。「少々お待ちください」と言っては先輩に助けを求め,自分では対応しきれず電話を代わってもらうこともしばしば。対応が遅れてお客さまを怒らせてしまうこともありました。
それでも一年も経つと自然と慣れ,少しずつ自分で仕事をこなせるようになりました。誰もがそうやって経験を積み,成長していくのだと思います。
そして今,60歳を過ぎて挑戦している行政書士の世界でも,まったく同じことが言えます。
行政書士の仕事は,官公署に提出する書類の作成・提出代理をはじめ,契約書や遺言書の作成,許認可申請,法人設立,外国人の在留資格申請,農地転用,車庫証明,相続・成年後見など,本当に多岐にわたります。
しかし,最初からすべての業務をこなせる人はいません。多くの行政書士は,開業当初は得意分野に絞って経験を積み,少しずつ業務の幅を広げていくのが一般的です。また,他の士業と違って勤務経験を積んでから独立する道は少なく,多くの場合,資格取得後すぐに独立し,実務を通じて学びながら成長してゆきます。
とはいえ,お客さまはそうした事情をご存じないことも多く,「相原さん,○○の手続きお願いできますか?」と,初めての分野の依頼をいただくこともあります。
ワタシは,基本的にお客さまからのご依頼は断らないことにしています。ただし,初めての業務には当然ながら戸惑いもありますし,調査や準備に時間がかかることもあります。その結果,お客さまにご迷惑をおかけする可能性もゼロではありません。
そこでワタシは,初めての業務であることを正直にお伝えするようにしています。
「小職は,この業務は初めてですが,よろしいでしょうか」
「不明点があればきちんと調べ,経験豊富な先輩に助言をいただきながら,責任を持って仕上げます」
「今回の業務でワタシに“勉強”させてください。その代わり,ワタシも報酬の方で“勉強”させていただきます」
正直にこのように話すと,不思議なことにお客さまからお断りされたことは一度もありません。そして,結果としてお客さまにご迷惑をおかけしたこともありません。
どんな仕事でも,誰もが最初は「初心者」です。だからこそ,新しい仕事には新入社員の頃のような新鮮な気持ちで,慎重に,丁寧に取り組めば良いのだと思います。
行政書士2年目のワタシなど,まだまだ新入社員のようなものです。若かったあの頃の気持ちを胸に,恐れず,しかし過信せず,丁寧に仕事を積み重ねていくことで,お客さまにご満足いただけるよう努めてまいりたいと思います。

コメントを残す