昨年，サラリーマンを卒業し，独立して行政書士になりました。そのとき，ワタシは「生活習慣を一つだけ改善しよう」と心に決めていました。それは，「早寝早起き」。それは，子供の頃からずっと苦手だったことでもあります。

ワタシは幼い頃から，そしてサラリーマン時代を通じて，早起きがどうしてもできませんでした。会社勤めの頃の起床時間はだいたい7時30分。休日ともなれば，10時近くまで寝ていることも珍しくありませんでした。そんな生活を続けながらも，心のどこかで「朝5時に起きて，7時から仕事を始め，15時には仕事を終えて，夕方以降は自由時間を満喫する」──そんな理想的な一日に憧れていました。

「早寝早起きは大事だ」と親や学校から何度も言われましたが，どうしてもできませんでした。とくに父は典型的な早起き人間で，子供のワタシを朝6時に無理やり起こすのが日課。しかし，それでも早起きの習慣はまったく身につきませんでした。

あるとき，著名な小説家のエッセイにこんな言葉がありました。「腹八分目，早寝早起きは，歳のせいで美味しいものを腹一杯食べることができなくなり，長時間眠ることができなくなった老人が悔しいから言い出したことで，それを若者に押しつけているだけだ」。その言葉を読んだとき，ワタシは深く共感しました。「そうだよね，そういうことなら，歳を取れば自然と早寝早起きになるはず」と思ったのです。

そこで，定年退職を機に，自分のライフスタイルを見直し，「朝型人間」への転身を試みることにしました。ところが，これが想像以上に難しい。早く布団に入っても眠れず，結局お酒を飲まないと寝つけない。では一日くらい眠いのを我慢してみようと試みたものの，ほとんど眠れない夜を過ごした翌日は朦朧としたまま過ごし，夜になってもやはり眠れない。40年近く染みついた「深夜就寝」の習慣は，そう簡単には変えられませんでした。

「少しずつ時間をずらしてみては？」とも考えましたが，結果は同じ。起床・就寝時間が不規則になり，慢性的な寝不足のような状態に陥り，体調まで崩しかけました。結局，「早寝早起き」という目標は潔く諦めることにしました。

現在のワタシの生活は，朝7時30分〜8時頃に起床。朝食をとり，犬の散歩を済ませたあと，9時30分頃から仕事を始めます。仕事は，突発的な用事がなければ，妻が帰宅する19時頃まで。夕方にはジムで運動し，22時頃に夕食，そして0時に就寝という流れです。

この生活に，ワタシは何の不満も感じていません。むしろ「自分にとってベストな時間割」だと確信しています。起床時間が遅いと指摘されるかもしれませんが，自宅で仕事をしているため通勤時間が不要。これは「自営業の特権」であり，ありがたいことだと思っています。

「夜遅くの食事は良くない」「寝る直前の飲酒は健康に悪い」といった声もありますが，ワタシ自身はまったく悪影響を感じていません。食事・お酒・運動のサイクルは良好で，睡眠も深く，布団に入ればすぐに眠れます。かつて職場の仲間に「布団に入ると5秒で眠れる」と言って驚かれたことがありますが，今でもその状態は続いています。

朝も，家人に起こされるまで熟睡しており，起こされた直後は目が覚めず10分ほど布団の中で朦朧とすることもありますが，それも含めて心地よい時間です。

こうして振り返ると，「早寝早起きができない」というコンプレックスのために，かえって無理な挑戦をして体調を崩しかけたこともありました。しかし今は，自分に合ったリズムを大切にするのが一番だと考えています。60歳を過ぎてからは，誰かの価値観に合わせて無理に生活を変える必要はない。自分らしいペースで，無理なく楽しく毎日を過ごすことこそ，充実した人生につながると実感しています。