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銀行相続手続きの共通化と行政書士の視点

ワタシが自宅で仕事をしていると,ある銀行の方が訪ねて来られました。10月1日から宮城県内の銀行における相続手続きが共通化されるとのことで,行政書士への情報提供のために各事務所を回っているそうです。炎天下の中での訪問に「大変だな」と思いながらも,その内容には日頃から相続に携わる行政書士として興味をひかれました。

県内10の金融機関が連携し,相続手続きの届け出用紙や提出書類とその要件をを統一するというのです。実際に相続業務を扱う立場からすると,これは大きな前進です。相続の際には,戸籍謄本一式,住民票,印鑑証明書など,膨大な書類を集める必要がありますが,銀行によって書式も求める証明書の条件もバラバラでした。同じ「印鑑証明書」であっても,有効期限を3か月以内とする銀行もあれば6か月以内とする銀行もあり,その根拠が法律に明記されているわけでもないのに実務上は従わざるを得ません。依頼者の方から「どうして銀行ごとに違うのですか」と尋ねられるたび,説明に苦労してきました。そうした不合理が是正されることは,相続人にとっても,手続きを代理するわれわれ行政書士にとっても大きなメリットです。

一方で,課題もあります。今回の共通化に「都市銀行」や「ゆうちょ銀行」が含まれていないことです。これらは全国展開している銀行のため,県単位の取り組みに加わるのは難しいのでしょうが,実務的には相続手続きは一県内にとどまらず,相続財産にはこれらの銀行口座が含まれることも多く,依然として複雑さは残ります。今後は,こうした動きが県域を越えて全国的に広がることが望まれます。

また,実務に携わる者として気になるのは「例外対応」です。配布されたチラシにも「被相続人さまのお取引内容等によっては,各金融機関でお取り扱いが一部相違する場合があります」と記載がありました(銀行らしい「予防線」ですね)。つまり,統一ルールといっても,実際の現場では銀行ごとの裁量が残る可能性があります。相続人や代理人にとって「例外」は見落としやすい部分であり,トラブルの火種にもなり得ます。私たち行政書士が依頼を受ける場合には,制度が変わったからといって安心せず,銀行ごとの運用実態を確認する姿勢が引き続き必要です。

それでも,銀行が「相続人の利便性」を意識して改善の一歩を踏み出したことは高く評価できます。相続手続きは誰にとっても避けて通れないものであり,その負担が少しでも軽減されることには大きな意味があります。

行政書士としては,制度の利点と課題の両方を見据えながら,依頼者にとって最もスムーズな解決を提供できるよう,今後も実務に真摯に向き合っていきたいと思います。

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