非常時の出社,それって本当に必要ですか?
7月30日の朝,遠くロシアで発生した地震の影響による津波警報で,日本列島の広範囲が大混乱しました。特に,今回は,正確な津波予測が難しい中での警戒態勢だったため,鉄道やバスといった公共交通機関の多くが一日中運休を余儀なくされました。首都圏では通勤客がタクシー乗り場に長蛇の列をつくるなど,大混乱となったようです。
このような状況のたびに,ワタシが気になるのは「電車が止まっても,タクシーを使ってでも,たとえ『這ってでも』出社する人たち」の姿です。そして,同時に浮かぶのが「アナタには,今日,そこまでして出社するほど,重要な仕事があるのですか?」という素朴な疑問です。
あくまでワタシの個人的な感覚ではありますが,自分自身の会社員時代を振り返ってみても,「今日どうしてもやらなければならない仕事」は,実はそう多くなかったように思います(自然災害や停電で、現場や職場に駆けつけなければならないときは別です)。もちろん,毎日それなりにやるべき仕事は山積みでした。しかし,「今日やらないとどうしても困る」というほどの仕事は,あまりなかったように思います。そして,仮にそういう仕事があったとしても,事情を説明すれば,多くの場合は一日や二日なら相手は待ってくれるようなものばかりだったと思います。
それでは,なぜ多くの人が,あれだけ苦労して「何が何でも出社する」のでしょうか。ワタシが思うに,それは「仕事の中身」よりも,「とりあえず,そこにいること」自体が評価される文化が根強く残っているからではないかと思います。
「どうしてアイツは今日来てないんだ?」
「なんで,アイツはこんな大変なときに一緒にいないんだ?」
そんな声が飛び交う職場。出社して苦労を共感し合うことが,ある種の忠誠心や責任感の表明とみなされる。日本の会社には,そんな空気が充満しているように思います。
ワタシは昔から,こういった職場の空気に馴染めませんでした。ですから,大雪や台風,あるいは今回のような交通混乱の際には,無理をせず,早めに見切りをつけて「今日は休みます」と会社に連絡し,自宅に戻ることを選んでいたように思います。それで仕事に支障が出たことは,ただの一度もありませんし,今なら,安全で落ち着いた環境の中で,リモートで仕事をすることだってできます。
もちろん,すべての仕事がリモート対応可能なわけではありませんし,出社が絶対に必要な業務もあるとは思います。しかし,だからこそ,公共交通機関がストップしている非常時には,「無理に出社する必要のない人」はタクシーの行列には並ぶべきではないし,「どうしても現場に行かなければならない人たち」にこそ,タクシーや限られた交通手段を譲るべきだとワタシは思います。
「自分の仕事は今日でなくても成り立つ」「無理して行かなくても社会は回る」——そう割り切れる人が増えることで,非常時における社会全体の効率や安全性は飛躍的に高まるはずです。
いま,ワタシは在宅を基本とする働き方に変わり,通勤の必要はなくなりました。それでも,あのサラリーマン時代の「とにかく出社」が絶対視される空気を思い出すたび,「あの風景が,少しずつでも変わっていくといいな」と感じています。
非常時には,まず「安全」を最優先に。
そして「合理性」と「思いやり」で,社会を支える——そんな働き方が当たり前になる未来を,ワタシは心から願っています。

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