Little things please little mind――行政書士としての“逃げる技術”
皆さんは,仕事をしていて「ちょっと変わった人」に出会うことがありませんか?
いわゆる「ヘンな人」にです。
英語のことわざに「Little things please little minds」というものがありますが,これは「小人は小事に興じる」とか「小さなことに喜ぶ人は,浅はかな人だ」という,少し蔑視と皮肉のこもった表現です。ワタシがこの言葉を思い出すのは,昔ある方から教わった,「変なことでほめる人は,変なことで怒るから気をつけろ」という教訓があるからです。どうでもいいことに感心したり,大げさに褒めてくる人というのは,「えっ,こんなことで怒るの?」ということがあるから気をつけろと言うことで,皆さんも同じような経験で戸惑ったことがあるのではないでしょうか。
ワタシ自身,長いサラリーマン生活の中で,そうした上司と仕事をしたことがあります。評価の視点がどこかずれていて,仕事をしていると,「なぜそんなことで褒めるの?」と首をかしげることがある一方で,本当にヘンなことで怒りだしたり,どう見ても仕事ができるとは思えない人を絶賛したりする,本当に不思議な人でした(おかしい人でした)。幸い,その方と一緒に仕事をした期間は短く,大きなトラブルにはならず,あまり被害も受けませんでしたが,「二度とこのコイツの下では働きたくない」と強く思ったものです。
行政書士として独立してからも,こうした「変わった人」と出会いは何度もありました。会社であれば,ある程度同じ価値観や常識を持った人が集まっていますし,長く一緒に働くうちにお互いの人柄も分かってきます。しかし,行政書士の仕事では,初対面の方と面談し,その場で仕事の依頼を受けることもあります。初対面の方が,どんな方なのか,どんな価値観を持っているのか,最初はまったく分からず,とても緊張します。
こうした状況では,まずは相手の気持ちや考え方に合わせて仕事を進めることが大切だと感じています。相手の話に耳を傾け,できるだけお客さまに寄り添うことで,信頼関係を築くことができます。しかし,中にはどうしても自分には理解できない,あるいは「この人と仕事を続けるのは難しい」と感じる相手もいます。そんなとき,ワタシは「相手の気分を損ねることなく,そっと距離を取る」ことも,行政書士にとって大切な技術だと思うようになりました。
相手の受け答えや態度から,その人の本質を見極めるのは簡単なことではありません。それでも,経験を重ねる中で,少しずつ自分なりの“逃げる技術”を身につけていきたいと考えています。相手に合わせて仕事を進める柔軟さと,無理だと感じたときに穏やかに身を引く勇気。その両方が,行政書士として,そして一人の社会人として必要なのだと,日々実感しています。

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