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「高齢者から免許を取り上げる」だけでいいのか――ワタシが考えるクルマと田舎の現実

ワタシの住む住宅団地は,ワタシの親の世代が家を建てた時代から続く場所です。今では高齢者がとても多く,近所のスーパーも高齢者のクルマでいっぱいです。正直,時々ひやりとする場面もあります。特に,昔のクルマには自動ブレーキなどの安全装置がついていないことが多く,見ていて不安になることも少なくありません。

高齢者の多くは「今あるクルマがもったいない」と言い,安全装置のある新しいクルマにはなかなか乗り換えません。その気持ちも分かりますが,やはり安全面を考えると心配です。

池袋で発生したような深刻な死亡事故が起きると,「高齢者から免許を取り上げるべきだ」という声が強まります。確かに,深刻な死亡事故は高齢者の方が多いというデータもあります。しかし,事故の発生率そのものは,免許取りたての10代や20代前半の方が高いというのが事実です。

高齢者から免許を取り上げるのは簡単ですが,それだけで社会がうまく回るのでしょうか。都会なら公共交通機関やタクシーが充実しているので,クルマがなくても生活できます。しかし,田舎ではそうはいきません。ワタシが能代市に単身赴任していたとき,バスはほとんど機能しておらず,クルマなしでは生活が成り立ちませんでした。

家族や身内が「タクシーを使って」とか「用事がある時はいつでも言って」と言ってくれても,お願いする高齢者の方々は「タクシーなんてもったいない」と思うし,たとえ,身内であっても人に頼ることには後ろめたさを感じてしまいます。若い頃からクルマ中心,クルマ前提の生活をしてきた人にとって,「クルマのない人生」は「あり得ない」のです。

人間は誰しも間違いを犯す生き物です。単純な事故なら,むしろ若者の方が多いのが現実です。大切なのは,池袋の事故のような「深刻な死亡事故」をなくすこと,逆走などの重大なミスを防ぐことだとワタシは思います。

今のクルマには,自動ブレーキやペダル踏み間違い防止装置など,さまざまな安全装置が搭載されています。これらの装置は,特に高齢者の重大事故を減らすのに効果的だとされています。たとえば,衝突被害軽減ブレーキ(AEB)は,追突事故を大幅に減らす効果があり,システムが進化するほどその効果は高まっています。そして,これらのシステムは,これからますます進化してゆき,その先にある「自動運転」も,もはや夢ではない段階にまで来ています。

ワタシは,高齢者から一律に免許やクルマを取り上げるのではなく,安全装置のついたクルマに乗ってもらうことで,深刻な死亡事故を減らすべきだと考えます。国が高齢者の新車購入に補助金を出したり,80歳以上の方には安全装置のないクルマの運転を禁止するなどの思い切った制度が必要だと思います。また,免許更新の際の条件を厳格化し,「運転をしては危ない人」については免許の更新を認めず,その代わり車がなくても生活が成り立つ仕組みを提供してゆくことが必要だと思います。

忌憚のない言い方をすれば,「田舎でクルマを運転できない」ということは,社会的な死を意味します。外出の機会が減り,地域社会とのつながりも失われ,孤立が進んでしまいます。高齢者がクルマを手放すことで,地域コミュニティ自体が弱体化するという現実もあります。

ワタシは,画一的に「高齢者から免許を取り上げる」ことには反対です。大切なのは,深刻な死亡事故を減らすために,安全装置のついたクルマに乗ってもらうこと。そして,田舎で暮らす高齢者が社会から孤立しないよう,現実的な制度や支援を考えることだと思います。

高齢者も若者も,誰もが安心して暮らせる社会を目指して,ワタシはこれからもこの問題を考え続けたいです。

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