売り手と買い手は本来対等である~ワタシが考えるビジネスの矜持~
ワタシは仕事で「契約書の作成」をお手伝いすることがあります。一般的な売買契約書ですと,買い手である「甲」と,売り手である「乙」の関係の中で,価格,数量,細かい販売条件などを定めてゆきます。本来,甲と乙,つまり売り手と買い手は対等な立場で契約を結ぶべき存在です。売り手は商品やサービスを提供し,買い手はその対価を支払う——この関係は,どちらが上でも下でもなく,双方が合意した,等しい価値を交換するものだからです。
しかし,現実のビジネスの現場では,必ずしもこの「対等な関係」が保たれているとは限りません。多くの場合,代金を支払う側である買い手の方が力が強くなりがちで,売り手は「お客さま」に合わせることが求められがちです。反対に,売り手の立場が強くなることもありますが,それは,売り手が提供する商品や役務に独自性があり,他に代替の効かないものである場合に限られるようです。
ワタシ自身,サラリーマン時代には長く購買部門に所属しており,契約の多くで「甲」=買い手の立場で関わってきました。今振り返れば,売り手よりも優位な立場で仕事をしていた「恵まれた」サラリーマンだったと言えるかもしれません。
しかし,ワタシがお世話になった会社は,そもそもが,「電気を作って売る会社」だったので,入社当初は「電気を販売し代金をいただく」仕事をしており,時折お客さまから厳しいお言葉をいただくこともありました。ですから,それらの仕事を通じて,お客さまから「お金をいただく」ことの大変さを学んだし,その後も多くの現場で,「ものを売る」仕事の大変さを経験しました。
あるとき,ワタシがいた会社と長年取引のあった,いわば「お得意さま」との関係が,ある契約で逆転するということが起こりました。つまり,ワタシたちが役務を提供する側,つまり「乙」(=売り手)の立場になったのです。通常通り,「よろしくお願いします」と商談が始まり,会議のあと先方から議事録が送られてきました。「内容をご確認ください」とのことだったので,確認し,一部を修正して返送しました。
すると相手から,「買い手が作った議事録に売り手が修正を加えるとは何事か。売り手の立場をわきまえろ!」と思いがけないクレームが入りました。この一件には本当に驚きました。なぜなら,逆の立場の時には,打ち合わせ後に議事録を確認し,修正に応じるのはごく当たり前のことだったからです(正直「オマエが言うか?」という心境でした)。立場が変わると,これほどまでに人や会社の態度が変わるものかと痛感しました。
この経験から,ワタシは「売り手と買い手は本来対等なのだ」という原点を改めて強く意識するようになりました。どちらが上でも下でもなく,互いに価値を認め合ってこそ,健全なビジネス関係が築けるはずです。そのためにワタシができることは,自分自身を磨き,独自の「強み」を持つことだと思っています。
ビジネスにおいて,売り手と買い手が対等であるという意識を持ち続けること。それは,お互いに敬意を持ち,誇りを持って仕事をするために欠かせない姿勢だとワタシは考えます。これからも,自分自身を磨き続け,お客さまに心から喜んでいただける「価値」を提供してゆきたいと思います。

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