働きながら勉強して資格を取ること
行政書士として独立することを決めた時,職場の同僚や友人からは,驚かれ,「働きながら勉強したなんてスゴイな!」と言われたり,「どうやって学習時間を確保したの?」と聞かれました。私の場合,単身赴任で,自分が自由に使える時間はたくさんあったし,自発的に始めた勉強なので「つらい」と思ったことはなく,比較的抵抗なく,机に向かう生活を続けることができました。
行政書士試験に挑戦した話は,これまでもここのブログで記していますが,秋田県の火力発電所に単身赴任したことがきっかけでした。当時,日本は,新型コロナウイルスの感染拡大で大混乱をしていました。ワタシが勤務していた火力発電所は「電気を作る工場」。社会にとって欠かせない重要な施設ということで,職場では厳しい感染防止策が取られていました。毎日の行動についても,「誰と」「どこへ」「何をしたか」などを記録する必要があり,必要に応じ,報告が求められました。プライベートの行動は厳しく制限されて、県外への移動も規制されました。仕事が終わった後も,外出できるのは近所のスーパーやコンビニくらいで,それ以外の娯楽はほとんどない生活でした。
発電所の仕事はとても忙しいのですが,突発的なトラブルがなければ定時で帰れることが多く,18時前に社宅に戻ると,翌朝までたっぷりと自分の時間が持てました。単身赴任ということもあり,月曜から木曜までの夜は「自分の時間」としてしっかり確保できたので,「この時間を使って何か新しいことを始めよう」と考え,行政書士の受験勉強を始めたわけです。
今振り返ると,受験一年目のはじめの頃は,「時間はたっぷりある」との余裕からか,切羽詰まった真剣味に乏しかったと思います。ですから,今にして思えば,勉強自体がゆるかったし,スキマ時間の活用や効率的な学習についてはあまり考えていなかったように思います。週末,仙台に帰省した時は「勉強は平日にやればいいや」とあまり熱心に取り組まず,初めて学ぶ民法の難しさに何度も勉強を投げ出し,受験1年目は準備不足で不合格となってしまいました。
1年目の試験終了後,自己採点で自分の不合格を悟り,「来年合格するために何をすべきか」ということを真剣に考えました。当時,58歳だったワタシは,定年が目の前に迫っていることを改めて実感し,「60歳で会社を離れ,新しい仕事で生涯現役を目指したい」とかねてからの希望を叶えたいと強く思い,そのために,「絶対に行政書士になるのだ!」と改めて思いました。そして,行政書士として60歳からセカンドキャリアをスタートさせるためには,合格後,少なくとも1年くらいの準備期間は必要と考えれば,58歳のワタシにとって,残された時間はあまりなく,次の受験が事実上の「ラストチャンス」だということに気づいたのです。
その時,ワタシは猛烈に焦りを感じました。そして,まるでお尻に火がついたように,とにかく学習時間をかき集めて勉強を再開しました。「遊びたい」とか「勉強がつらい」なんて言っている場合ではなく,空いている時間はすべて勉強に費やしました。お風呂に入っている時も,トイレに入っている時も,必ず何かしらの教材やノートを見ていました(お風呂や,トイレには暗記する事項を紙に書き、何枚も貼り付けてありました)。「人間は,本気になった時,こんなにも頑張れるものか」と我ながら驚きました。これまでの合格体験記には,合格に向けて,様々な戦術・戦略を考え,それを実行する様を書いてきました。それらはすべて事実で,そういった打ち手が合格に大きく寄与したことは事実ですが,それ以上に「必死になること」で合格をたぐり寄せることができたのも事実だと思っています。
この経験を通して,ワタシは「人が真剣に頑張る時というのは,そういうものなのか」と感じました。「本当に合格したいと思い,必死になり,打ち手を考えた時,必ず道は開ける」。つまり,自分で「こうしたい」という方向が決まり,覚悟を決めれば,勉強の習慣をつけるとか,勉強するために時間を確保するなんていう問題は,どうにでもなるものだ。――今となっては,そういうことなのだと心から思っています。

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