最新情報NEWS

年金は「損得」で考えるべきものか?

現在,国会では年金制度の見直しについて議論が進められています。議題の一つとして,国民年金だけでは生活が困難な層に対して,厚生年金の財源を用いて支援するという案が挙がっており,世論の中でも賛否が分かれています。個人的には、厚生年金を財源とするという案については疑問を感じるところもありますが,国民への痛みは小さく,必要な施策を行い,老後を「安心」なものにしてゆくこと、それ自体には賛成です。

こうした議論が出るたびに,ワタシが気になるのは,年金制度を「損か得か」という軸で語る風潮です。例えば,「何歳から年金をもらえば一番得か?」とか,「年金なんて払ってもモトが取れない」といった話題は,ネット記事やYouTubeなどで数多く見かけます。

ですが,ワタシは,年金をそうした損得の観点で考えることには,根本的に違和感を覚えます。

「年金は〇〇歳からもらうのがお得」などと断言する人もいますが,それは一体何を根拠にしているのでしょうか? もちろん,平均寿命や統計データを用いて一定の予測はできるかもしれません。でも,個人の寿命は誰にも分からないものです。明日,突然命を落とすことだってあり得ます。逆に,100歳を超えて生きることも珍しくない時代です。そう考えると,「いくら払ったか」「いくらもらえるか」で損得をはかること自体,ナンセンスだと思うのです。

ワタシは,年金は「長生き保険」だと考えています。つまり,長く生きるという「リスク」(「長生き」ということは、本来喜ばしい話なのですが,経済,財政的には「リスク」と言わざるを得ないのですね。なんだか残念です)に備えるための社会全体での仕組み。年金保険料を皆で拠出し合い,高齢期の生活を支えるために設けられた制度です。受給開始年齢についても,それぞれの生活状況や健康状態によって異なるのが当然で,「誰にとってもベストな開始年齢」なんて存在しません。

この仕組みは,国民健康保険に置き換えて考えるとよくわかります。健康保険料は所得に応じて決まり,医療を必要とする頻度や金額は人それぞれです。たくさん払ってもほとんど病院にかからない人もいれば,少ない負担で高額医療を受ける人もいます。でも,誰もそれを「損した」「得した」とは言いません。それは,健康保険が「みんなで支え合う仕組み」だという共通認識があるからです。

年金も同じです。社会の安定を支える「助け合いの仕組み」であり,本来は損得で考えるものではありません。日本の公的年金制度は,賦課方式という仕組みをとっており,現役世代が高齢者を支える形になっています。2023年時点で,65歳以上の高齢者一人を,現役世代約2人で支えているという状況ですが,少子高齢化が進めばこの比率はさらに悪化します。だからこそ,制度の見直しや支え方の再検討が必要になっているのです。

ワタシたち一人ひとりが,この制度の意味と役割をもう一度見つめ直すべきときが来ていると思います。年金は,将来の安心を支えるための「みんなの保険」です。だからこそ,個人の損得ではなく,社会全体の安定と助け合いの観点から考えることが大切です。

年金制度は,国民全体で安定した老後を支えるための仕組みです。だからワタシは,「きちんと応分の負担をしてゆきましょう」と言いたいのです。それが,未来の自分や家族,そして社会全体の安心につながるのだと信じています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP