日本の戸籍ってスゴイ!
ワタシは行政書士として日々さまざまな業務に携わっていますが,その中でも「相続業務」は非常に多くの場面で関わる分野のひとつです。そして,相続を進める上で欠かせないものが「戸籍」です。被相続人(亡くなられた方)の相続を進めるには,その方が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を市役所や町村役場で取り寄せ,相続人を確定する作業が必要になります。
こうした業務に日々関わる中で,ワタシは改めて日本の戸籍制度の優秀さを実感しています。
そもそも「戸籍」とは,日本独自の制度であり,海外には類似の仕組みがほとんど存在しません。戸籍とは,日本国民の「親族関係(親子,婚姻など)」を一元的に記録・管理する制度で,法的な身分関係を明確にすることができます。
現在の戸籍制度は,明治時代に導入されたもので,近代国家としての整備が進む中で家族関係の把握や国民の管理を目的として発展してきました。戸籍には,氏名,生年月日,出生地,婚姻,離婚,死亡,養子縁組,親子関係など,さまざまな身分事項が記載されます。日本人であれば,出生と同時に戸籍に記載され,死後もその記録は残り続けます。
先日,相続手続きを依頼された方の戸籍をたどっていた際,明治時代初期に作成されたとみられる古い戸籍を目にしました。その中には,なんと「天保」「文政」「慶応」といった江戸時代の出生記録が記載されていたのです。
これらの年号を目にしたとき,ワタシは驚きとともに深い感動を覚えました。戸籍を通じて,そのご家庭の歴史を垣間見たような気持ちになり,自分の先祖でもないのに,ついその時代に思いを馳せてしまいました。日本という国が,これほどまでに精緻で制度的に優れた記録管理を,明治初期からすでに行っていたという事実には,日本人として誇らしさを感じずにはいられませんでした。
戸籍制度は時代の流れに応じて,少しずつではありますが進化しています。たとえば,昨日施行された改正戸籍法により,戸籍に氏名の「読み仮名」を記載することが義務付けられました。これにより,行政サービスにおける情報の一元化やデジタル化が一層進み,利便性も向上していくことが期待されています。
また,現在国会では「選択的夫婦別姓制度」の導入についての議論も進められています。仮にこの制度が実現すれば,戸籍制度に大きな変革が生じる可能性があります。ワタシ個人としては,現行の「旧姓通称使用」制度をより実効性ある形で整備すれば十分対応可能であると考えており,選択的夫婦別姓には慎重な立場を取っています。戸籍は,単なる書類ではなく,家族のつながりを形にする大切な制度です。軽々にその仕組みを変えてよいとは思えません。
このように,日本の戸籍制度は,法的,歴史的,文化的にも非常に価値の高い制度です。時代とともに制度の在り方が見直されることは避けられないとしても,ワタシは,この素晴らしい制度をできる限り丁寧に,そして未来へと受け継いでいってほしいと願っています。
行政書士として,これからも戸籍に向き合いながら,多くの方々の人生の節目に寄り添うお手伝いをしていきたいと考えています。

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