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築地の流儀~適正価格について考える~

美味しいもの,特に新鮮な魚介類に目がない私は,少し自分でも料理をすることもあり,新鮮なお魚が売っているお店を巡るのが大好きです。築地魚河岸は,今や外国人にも人気の「食の街」として知られていますが,平成30年までは大きな仲卸市場があり,まさに「東京の台所」として君臨していました。

築地の仲卸市場は,基本的に料理屋さんや小売店が仕入れに訪れるプロの市場。もともと一般の消費者が魚を買うことはできませんでしたが,平成20年代の終わり頃には,仕入れのピークが過ぎた時間であれば,一般の人でも買い物ができるようになっていました。仲卸の店頭には,街中の鮮魚店では見かけないような珍しい魚が並び,価格も小売店より割安。私も何度か足を運び,ワクワクしながら品揃えを眺め,買った魚の美味しさに驚いたものです。

そんな築地仲卸市場には,いくつかの「暗黙のルール」が存在していました。その一つが「値切りは御法度。客は仲卸に提示された“言い値”で買うこと」というものです。

この慣習の背景には,「売り手は常に“適正価格”で商品を提供し,買い手はその価格を信頼して購入する」という築地独自の信頼関係があります。市場の売買は,売り手も買い手も“プロの商売人”であり,単なる一見さんのやりとりではありません。お互いに信頼しあい,長い時間をかけて関係性を築くことが大前提です。時に値引きがあるとしても,それは信頼の積み重ねの中で成り立つ例外であり,基本は「お互いを信じる商売」なのです。築地では「安ければいい」という価値観ではなく,「適正な価格で,良いものを仕入れる」ことが何よりも大切にされてきました。

この「適正価格」という考え方は,ワタシのような士業の仕事にも通じるものがあると感じています。

最近では,行政書士などの士業の仕事においても,複数の専門家から見積もりを取り,最も安い価格を提示した人に依頼するようなアプリが登場しています。一見すると合理的に見えるこの仕組みですが,ワタシは少し不安になります。「報酬が安いこと」ばかりに注目して,「仕事の質」は本当に考慮されているのでしょうか。

たとえば「同じ行政書士」と言っても,それぞれに得意分野があり,経験や対応力,そして人柄も大きく異なります。ワタシだったら,「直接話もしないで,本当にその人に任せて大丈夫なのか?」と,逆に不安になります。

築地の「言い値」にも通じるように,誠実に,丁寧に,きちんとした仕事を心がけるのであれば,そのための報酬にも「適正な価格」があるはずです。

ワタシは,ベストな仕事をするために必要な報酬をきちんと考え,それを納得してくださるお客さまと信頼関係を築いていく。そんな「築地の流儀」のような仕事の仕方を,これからも大切にしていきたいと思っています。

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