「思い出に残る上司」からの箴言~漫然と言われたとおりにやるだけの仕事には価値がない~
ゴールデンウィークも終わり,「今日から仕事」という方も多いのではないでしょうか。ワタシは連休中も少しづつ仕事をしていましたが,今日からまた通常モードです。24時間,365日闘います。
先日、ワタシのサラリーマン人生で特に印象深かった上司,A課長について「思い出に残る上司」というブログを書かせていただきました(https://aihara-office.com/2025/04/07/%e6%80%9d%e3%81%84%e5%87%ba%e3%81%ab%e6%ae%8b%e3%82%8b%e4%b8%8a%e5%8f%b8/
)。A課長は仕事ではとても厳しい方で,数々の箴言を私たち部下に残してくださいました。今回は,その中でも特に心に残っている言葉をご紹介したいと思います。
A課長がよく口にしていたのは,「言われたとおりにやるだけなら誰でもやれる。それでは誰も評価してくれない。考えて仕事しろ!」という言葉です。
よくよく考えれば当たり前のことかもしれませんが,新人の頃からワタシは,与えられた仕事をミスなくこなすことばかりに気を取られていたような気がしました。日本の会社の多くは同じだと思いますが,「減点主義」の職場風土がそれを助長し,指示されたことをそのまま正確にやることが「正解」だと思い込んでいたのです。
しかし、A課長は「指示されたことをそのまま正確にやることなど,「あたりまえの話」であり,言われたことをベースに自分で考えそれ以上の仕事をしてこそ,人は感心し、評価してくれるのだ」と繰り返し教えてくれたのです。
この言葉を聞くと,私は昔の大阪商人のエピソードを思い出します。
昔の大阪商人の世界には、商売に対する厳しい精神や値切り文化がありました。
その象徴的なエピソードが「まんじゅう10銭10個」の話です。
商家の主人が丁稚に「1個10銭のまんじゅうを10個買ってこい」と命じます。丁稚は言われた通り、10銭×10個=1円で10個のまんじゅうを買って帰ります。しかし主人は、「10銭のまんじゅうを10個1円で買ってくるなら誰でもできる。なんで値切らないのだ」と叱るのです。
この話が意味するのは,「言われた通りに買うだけでなく,いかに安く仕入れるか」「商売は値切ってナンボ」という考え方です。丁稚には,ただ指示通りに動くのではなく,常により良い結果を目指し,利益を出す姿勢が求められたのです。
A課長の教えは,まさにこの大阪商人の精神と重なります。
最初は,課長の考えにワタシを含め全員が戸惑いました。「何を工夫すればいいのか?」と悩む日々が続きました。私自身は係長として,自分の仕事だけでなく,担当者2名の仕事についても「プラスα」を求められました。「係長,どうしましょう?」と相談されるたびに頭をひねり,悶々と考えました。
しかし、みんなで悩み,考えるうちに,次第に「考えること」が楽しくなってきたのです。しばらくこの習慣を続けていると、私自身の仕事も,担当者の仕事も,目に見えて質が上がっていきました。
でも,A課長の箴言は,仕事の質を上げるための,ほんの「序の口」だったのです。その後もレベルの上がった厳しい指導が続いていくのでした。まるで,「巨人の星」に出てくる星一徹の「火の玉千本ノック」みたいな感じですが,それはまた,今度お話したいと思います(こういう古いエピソードは歳がばれますね)。
「言われたとおりにやるだけなら誰でもやれる」。この言葉は,シンプルですがとても奥が深いと感じます。自分で考え,工夫し,指示を超える価値を生み出すこと――それこそが,仕事を通じて成長し,評価されるために必要な姿勢なのだと思います。

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