「駐箚」~アナタはコレ,読めますか~
毎年恒例,春の叙勲の受章者が発表されました。叙勲制度は,日本国や公共のために顕著な功績を挙げた方々を,国として表彰する伝統的な制度です。天皇陛下の名で勲章が授与され,その栄誉が称えられます。この日には,受章者の氏名などが各新聞の朝刊や内閣府のホームページで公表されます。
私はかつて会社の業務で,この叙勲を受けられた方々を調べる仕事をしていたことがあります。国から公表されたリストから,会社に関係するお役所や地域の方,お取引先などで受章された方がいないかを確認するのです。おそらく,どこの会社でも同じようなことをされていると思います。
叙勲の対象となるのは,社会や公共のために長年貢献された方や,顕著な功績を挙げられた方です。公務員や教育,福祉,警察,消防などの分野で長く勤められた方も多く選ばれています。選考は各省庁や地方自治体などからの推薦をもとに,内閣府賞勲局で審査され,最終的には閣議決定されます。
勲章には「大勲位菊花章」「桐花大綬章」「旭日章」「瑞宝章」「宝冠章」「文化勲章」などがあり,功績や分野によって授与される種類や等級が異なります。また,褒章には「紅綬」「緑綬」「黄綬」「紫綬」「藍綬」「紺綬」などがあり,社会福祉,学術,産業,寄付などの貢献分野ごとに分かれています。いずれも,さまざまな分野で広く社会に貢献された方々に授与されるものであり,その素晴らしい功績には心より敬意を表したいと思います。
さて,叙勲の受章理由の中で,時折「駐箚(ちゅうさつ)」という耳慣れない言葉を目にすることがあります。「駐箚」とは,外交官などが任務のためにしばらく外国に滞在することを指します。特に,公務員が命令を受けて派遣され,その地に駐在するという意味合いが強い言葉です。
一方,「駐在」も似た意味を持っていますが,こちらは一般企業の社員などが職務のために一定期間,特定の場所にとどまることを指し,民間のビジネスパーソンなどにも広く使われる一般的な表現です。
「駐箚」は,特に外交官や公務員の公式な派遣・滞在に用いられる,やや格式ばった言葉です。例えば「英国駐箚大使」のように,公式文書や辞令などで見かけることがあります。この言葉は,かつての「国は民間より上」という価値観が色濃く反映されているものであり,歴史を感じさせる表現でもあります。
普段はあまり目にしない「駐箚」ですが,叙勲や公式な場面では今も生きている日本語です。皆さまはどう思われるでしょうか。

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