「リベンジ(revenge)」という言葉が持つ違和感
スポーツの世界で,負けた選手が「次はリベンジします」と語る場面をよく見かけます。本人としては「次こそは勝つぞ」という前向きな意気込みを表現しているのだと思うのですが,しかし,どうしてもこの「リベンジ」という言葉にワタシは違和感を覚えてしまいます。
「リベンジ」という言葉は,もともとプロレスや格闘技の世界で使われていたもの。日本で広く知られるようになったきっかけの一つは,西武ライオンズの松坂大輔投手(当時)がロッテの黒木知宏投手と投げ合って敗れた後,「リベンジします」と宣言し,再戦で見事プロ初完封を果たしたエピソードだと言われています。この出来事以降,「リベンジ」はスポーツ界を中心に一般にも浸透していきました。
しかし,「リベンジ(revenge)」という英単語の本来の意味は「復讐」「仕返し」です。相手に対して恨みや憎しみを抱き,その感情を晴らすために行動するという,かなり重いニュアンスを含んでいます。英語圏では「revenge」という言葉をスポーツの文脈で軽々しく使うことは少なく,むしろネガティブな印象を与えてしまうこともあるようです。
一方,日本語の「リベンジ」は,「再挑戦」や「雪辱を果たす」といった前向きな意味合いで使われることが多い言葉です。格闘技の「リベンジマッチ」から派生し,今では「リベンジ転職」や「リベンジ公演」など,単に「もう一度挑戦する」という意味で幅広く使われています。言葉は時代とともに意味が変化する生き物であり,日本人の間では「リベンジ=再挑戦」という解釈が一般的になっているのも事実です。
それでもワタシが「リベンジ」という言葉に違和感を覚えるのは,スポーツが本来「相手をリスペクトし,正々堂々と勝負する」美しい戦いであると信じているからです。勝負の世界において「復讐」や「仕返し」という感情を持ち込むことは,スポーツマンシップの精神にそぐわないように感じます。たとえ日本語として意味が変化しているとしても,語源に込められた「憎悪」や「恨み」といった負の感情が,どこかで言葉の響きに残っているように思うのです。
もちろん,「リベンジ」という言葉を使うことで「次こそはやってやる!」という意気込みやエネルギーを表現できるという利点もあるでしょう。でも,もしスポーツの美しさやフェアプレーの精神を大切にしたいのであれば,「雪辱を果たす」「再挑戦する」「借りを返す」など,よりポジティブで相手への敬意を感じさせる日本語を選ぶのも一つの方法ではないでしょうか。
言葉は時代とともに変化し,使う人の意図や社会の空気によって新たな意味を持つようになる生き物です。しかし,その言葉が本来持っていた意味や背景にも,時には思いを馳せてみる必要があるでしょう。「リベンジ」という言葉が持つ違和感は,スポーツの本質や言葉の力について考えるきっかけを与えてくれるかもしれません。とにかく,ワタシは「リベンジ」という言葉が大嫌いです。
“「リベンジ(revenge)」という言葉が持つ違和感” への2件のフィードバック
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こんにちは。
初めてメールいたします。
私も相原さんの意見に賛成です。
英語で習った「revenge」は復讐、仕返しでした。
そもそもなぜ日本でこのような使われ方がされようになったのか知りたくて検索したところこのページに行きついた次第です。
妻と二人でニュースを見ていて、一般の方が今年見損ねた効用を来年こそは見たい、といった意味で使われていましたが、妻は特に違和感なく聞いていました。
妻のように違和感なく聞いている人がほとんどなのでしょう。確かに言葉は生き物で、時代とともに変化していくもの、消えていくものなのかもしれませんが、こと「リベンジ」についてはその言葉の本来の意味を考えるにつけ、今の日本での使い方には賛同いたしかねます。
気になる言葉という意味では「ら」抜き言葉がありますが、一時期言われたほど取り上げられなくなったように思います。
これも時代の流れなのでしょうか…。
まとまっていませんが、コメントさせていただきました。-
コメントありがとうございます。
revengeについては高校の英語の先生が「この言葉は、日本語で言えば、復習とか仇討ちを意味するような深い憎しみに満ちた言葉だ。それを考え訳すように」とおっしゃっていたことが,ものすごく記憶に残っているもので、昨今の気軽な使い方には非常に違和感を感じており、それをブログにさせていただきました。
もちろん「和製英語」に代表されるように,英単語をカタカナにして、本来の意味とは異なる意味を持つ言葉は珍しくありませんし,言葉というのは生き物なので、時代によって意味が変わることはあります。
そう思いつつも「revenge」に関しては元の意味を考えると軽々しく使うべきではないと考えていたので,コメントをいただき,「我が意を得たり」と感じた次第です。
「毎日更新」を目標にブログを書かせていただいておりますので,他の記事につきましても、感想などお寄せいただければ大変にうれしく思います。
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