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退職代行サービスについて思うこと

新年度を迎え,多くの人が「新入社員」として社会に羽ばたいていったことと思います。

私が社会人になったのは,バブル真っ盛りの平成元年4月。初任地は岩手県盛岡市。「よし!頑張って将来は社長になるぞ!」と張り切ってサラリーマンのキャリアをスタートしました。

ここ数日,テレビを見ていると「退職代行サービス」の話題がよく出てきます。

テレビが報じていたのは「退職代行サービス大盛況」「入社式の当日に新入社員の申し込み○○件」といったものでした。入社式初日に退職を決めた理由というのが「説明を受けたときと職場の実態に違いがあった」とか,「やりたい仕事とは違う部所に配属されたから」などというもので,正直,自分の時代には考えられないような理由での退職でした。テレビではお決まりの古くさい「昭和の会社の掟」みたいな話で会社をディスり,「イマドキの若者」擁護論が語られていました。今の若者については,大学のサークルの交流会などで現役の学生と接する機会があり,「自分の意思,意向をしっかり持っており」,「好き嫌いが明確」,「イヤなものはイヤとはっきり言う」し,「何事にも見切りが早い」というのが私の感じた印象だったのですが,退職代行サービス隆盛については,そういった今の若者の特徴がはっきりと反映されていると感じました。テレビでは,識者やコメンテーターが,初日で退職してしまう今の若者の行動について賛否様々なコメントを寄せていましたが,私は「たった一日で何がわかるの?」とは思いつつも,初日でやめたいと思ったなら「その方が本人,会社双方にとってしあわせ」と感じてしまいます。人生,思い込みや勘違いは多々あることで,その結果生じた雇用のミスマッチについて,その後もズルズルと引きずることは不幸なことですし,次の可能性があるなら,自分の責任で(リスクをとって)さっさと見切りをつけて,新たな道を見つけることも悪いことではないと感じるからです。ただ,社会人として,これが2度,3度と続くようなことになれば,その方は社会における信頼をなくすことになり,その後の人生の選択肢が狭まってゆくことを覚悟しなければならないでしょう。また,雇う側,会社としても一旦雇った人は,余程のことがない限り解雇できないというのが,今の雇用制度ですから,初日に会社で働くことに疑問を持ち,そのことについて自ら意思表示すら出来ない人間は「雇わない方が無難」とも言えるでしょう。

ところで,この「退職代行サービス」は行政書士でもやられている方がいます。退職代行サービスは,依頼者の代わりに会社に退職の意思を伝えるので「代理人」と間違えるのですが,弁護士以外の方がこれをやる場合は,代理人ではなく,民法上の「使者」に該当します。使者とは本人の完成した意思表示を相手に伝達する者,つまり,相手に対し,本人の言い分を伝える役割です(書いた字のごとく「単なるお使い」です)。ですから,本人に代わって相手方と条件などの交渉を行うことはできません(この場合は弁護士のお仕事になってしまいます)。そのような状況で,退職代行サービスが成立しているということは,退職代行サービスが入ることで,大体の場合にはもめることもなく退職が成立しているということですね。実際に退職ビジネスを起業しようと思えば,それなりのノウハウは必要だし,訴訟リスクを抱えていることを考えれば,安易にこの世界に飛び込もうとは思いませんが,結果的に依頼者には感謝され,収益も上がるなかなかに頭の良いビジネスだとは思いました。

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