海事代理士試験とは?
海事代理士になるためには,行政官庁で10年以上海事関係の事務経験がある元職員などの例外を除けば,海事代理士試験に合格しなければなりません。
海事代理士試験はまず,9月下旬に筆記試験が行われ,合格者に対し12月の上旬頃に口述試験が行われ,合格者を決定します。こういった士業の試験にしては珍しく,試験の開催は土日ではなく平日で(ワタシが受験したときは火曜日でした),全国11カ所の地方運輸局で丸一日かけて行われます。国土交通省では海技免状など試験を行うことが多いからか,お役所の中に立派な試験場(机も椅子もしっかりとした,本当に立派な試験場でした)があり,海事代理士試験もそこで行われました。
筆記試験の科目は「一般法律常識」として,①憲法,②民法,③商法(ただし第3編「海商」のみ対象。)の3科目。「海事法令」として,④国土交通省設置法,⑤船舶法,⑥船舶安全法,⑦船舶のトン数の測度に関する法律,⑧船員法,⑨船員職業安定法,⑩船舶職員及び小型船舶操縦者法,⑪海上運送法,⑫港湾運送事業法,⑬内航海運業法,⑭港則法,⑮海上交通安全法,⑯造船法,⑰海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律,⑱国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(国際港湾施設に係る部分を除く。),⑲領海等における外国船舶の航行に関する法律,⑳船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律と17科目の計20科目が課されることになります。配点は各科目10点満点ですが,⑤船舶法,⑥船舶安全法,⑧船員法,⑩船舶職員及び小型船舶操縦者法の4科目は20点満点の計240点満点となります(筆記試験合格者には,筆記試験で配点が20点である海事関係法令4科目について口述試験が課されます)。
筆記試験の合格点は240点満点の60%である144点か受験生の平均点の高い方となり,ワタシが受験した令和5年度試験では受験生の平均点が64.08%でしたのでおそらく157点が合格点で,合格率は55.7%でした。
それほど難しい問題は出題されませんが,科目数が20科目と膨大で,暗記事項が多く,海事関係の専門用語が頻出しますので,勉強はなかなかに骨が折れます。また,他の士業の試験と比べると合格率も高めですが,受験者は船会社や港湾荷役業者などの海事関係者が多く,また,司法書士,行政書士、社会保険労務士等の有資格者が業容を広げるために,いわゆる「ダブルライセンス」を目指して取得するケースも多いので,受験生の質は合格率の割には,高めだと思います。
また,この試験の一番の特徴は,受験者が少なく,志願者は毎年500名程度(行政書士試験の100分の1程度です)であるため,参考資料がほとんどなく,またいわゆる「合格講座」を開講している大手資格予備校は伊藤塾だけという状態なので,船舶や港湾に関する知識がなく,海事関係法規に知見のない一般受験者にはとっつきにくく,独学で合格するためには,工夫が必要です。

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