相談員を務めて感じること
行政書士登録をしたあと,自治体や各種団体が主催する「無料相談会」で何度か相談員を務めさせていただきました。
相談に来られるお客さまは,高齢の方が多く,相談事項も9割以上が,ご自身の遺言,相続に関するお悩みです。皆さん,真剣に悩んでおられ,こちらも身が引き締まる思いで,アドバイスをしています。こちらの回答で,お客さまのお悩みが解決できると,皆さん晴れ晴れとしたお顔でお帰りになられますので,こちらもお客さまに喜んでいただけ,非常にうれしい気持ちになります。お客さまからの質問は,どれ一つとして同じものはなく,お客さまの事情によって複雑になってしまい,自力で解決することが難しいと思われる事案もあり,この場合には専門の士業(弁護士,司法書士,行政書士など)の方にお任せするよう助言することもあります。
また,相談内容によっては,「これは解決が難しいな」と思われる事案にも出会います。典型的なのは,「口約束でこれまで便宜を図ってきたのだけど,便宜の見返りであるはずの約束を守ってもらえない」というものです。
兄妹,親戚,親しい関係にある方の間での約束事は,正式に契約書を交わさず,「口約束」だけであることは多々あることですし,日本の民法では,口約束で交わした契約も有効です。ただし,契約の相手から「そんなもん、知らねぇよ」と約束を反故にされたときに「契約の存在が客観的に証明できない」という大きな問題があります。つまり,相手方に履行を求めても,強制力がないですし,訴訟を起こしても証拠がありません。親しい間柄でも「口約束」による契約は非常に危うく,お奨めできないものなのです。このようなときは正直「どうしてそんな約束しちゃったの?」と思いますし,何も出来ない自分に情けなくなります。だからといって,お客さまに「○○だから出来ない」と理由を告げ,突き放してしまうのでは,せっかく相談に来られたお客さまがあまりに気の毒です。ワタシは,そのような場合,お客さまと一緒に困り,厳しい状況でも何か打開策がないかを一緒に真剣に考えることにしています。例えば,相手方ともう一度きちんと話をしてお願いするとか,相手方の契約の履行に一縷の望みをつなげるような方法を一緒に考えます。また,状況によっては,地元弁護士会の法律相談の利用をお奨めすることもあります。やってしまったことには取り返しがつかないかもしれませんが,少しでもお客さまの心の傷を癒やし,明るい気持ちになっていただく。これも相談員の大切な仕事だと考えています。

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