子供時代に出会った「天才」の思い出と,ワタシの仕事のかたち
先日,高校のクラス会があり,懐かしい昔話に花が咲きました。
その中で,「同じ中学校に,のちに直木賞を受賞された方がいた」という話題が出ました。その方は,子供のころから文芸やクリエイティブな分野でずば抜けた才能を発揮されていたそうです。たとえば,学級新聞で原稿のスペースが余ったとき,「あの人に頼めば大丈夫だ」と声がかかり,わずか数分でエッセイや詩をすらすらと書き上げてしまう。そんな逸話を聞き,皆で「本物の才能というのは,子供のころから違うものだね」と感心したのでした。
その話を聞きながら,ワタシは自分の子供時代を思い出していました。
ワタシの小学校にも,一人,強烈な印象を残す「天才」がいました。2学年上の先輩で,小学校の放送部に所属されていた方です。
昼休みになると,校内放送で放送劇が流れるのですが,小学生の演技ですから,普通はそれなりに「かわいらしい」ものです。ところが,その方だけはまったく違いました。声の使い方,間の取り方,感情の込め方が,小学生の域を完全に超えていたのです。本物の声優さんが演じているかのような,圧倒的な表現力でした。
「この人,何者?」と,子供心にも不思議でなりませんでした。
中学生になると,やはりその方は際立っていました。
演劇,音楽,文芸と幅広い分野で才能を発揮され,文化祭では主役を務めるスター的存在でした。「こんなすごい人が,同じ学校にいるんだなあ」と,強く印象に残ったことを,今でもよく覚えています。
そして時がたち,彼女は作曲家として活躍するようになります。
2012年には,NHK東日本大震災プロジェクトのテーマソング「花は咲く」を作曲されました。この曲は,被災地への思いを静かに,しかし力強く伝え,多くの人の心を支えてきました。さらに,平成から令和への改元に際して行われた「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」(2019年11月9日)では,奉祝曲「Ray of Water」の作曲・編曲,そして献奏指揮を務められました。
何の予備知識もなくテレビを見ていたワタシは,画面に彼女が映し出された瞬間,思わず「えっ」と声を上げてしまいました。
その方こそ,作曲家の菅野よう子さんです。
菅野よう子さんは,アニメ,ドラマ,映画,CM,舞台音楽など,ジャンルを超えて活躍されている日本を代表する作曲家で,「カウボーイビバップ」「攻殻機動隊 S.A.C.」「マクロスF」など,国内外で高く評価される作品を数多く手がけてこられました。感情を揺さぶる音楽で,人の心に直接語りかけるような表現力は,まさに唯一無二だと思います。
ワタシは,菅野さんとは「同じ小学校,中学校に通っていた」というだけで,個人的な接点は何一つありません(口をきいたことすらありません)。それでも,同窓の方がこれほど大きな舞台で活躍されていることを,心から誇らしく思います。そして,子供のころとはいえ,天才の表現に何度も触れることができたことは,とても幸せな経験だったと感じています。
一方で,ワタシ自身は,彼女のような天才ではありません。
音楽や芸術の力で,多くの方を元気づけたり,感動させたりすることはできません。ワタシに「天賦の才」と呼べるものがあるかといえば,正直,胸を張って言えるものはないと思います。
それでも,ワタシには,ワタシなりにできることがあります。
それは,実直に,正直に,お客さまに寄り添うことです。お困りごとを丁寧にうかがい,その方にとって何が一番良い解決策なのかを一緒に考え,少しでも前に進むお手伝いをすることです。
派手さはありませんし,泥臭い仕事かもしれません。
それでも,一つ一つのご相談に誠実に向き合い,「頼んでよかった」と思っていただける仕事を積み重ねていくこと。それが,天才ではないワタシが選んだ,行政書士としての生き方です。
子供のころに出会った「天才」は,今もワタシの心のどこかで輝いています。
そしてワタシは,そのまぶしさを胸に抱きながら,今日も地に足の着いた仕事を続けていきたいと思っています。

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