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「比例代表の“14議席”が映し出すもの」

※本日のブログは,今回の衆議院議員選挙の結果から,選挙制度に関して論評するものです。個別の政党等について論じるのではなく,選挙制度や有権者の心情などについて,できる限り中立的な立場から考えてみたいと思います。

2月8日に実施された第51回衆議院議員選挙は,「私が総理大臣でよいのかの信任を受ける選挙だ」と述べて衆議院を解散した高市首相率いる自由民主党が圧勝する結果となりました。自民党は改選前の195議席から316議席へと大きく議席を伸ばし,連立を組む日本維新の会と合わせた議席数も,いわゆる「圧勝」と呼ぶにふさわしい水準に達しました。形式的に見れば,高市内閣は国民から明確な信任を得たと言ってよい結果です。

この大勝の陰で,選挙制度上きわめて珍しい現象が生じました。自民党が比例代表で獲得した議席数が,当該ブロックで立候補していた比例名簿登載者の数を上回り,その「余った議席」が他党に振り分けられることになったのです。具体的には,東京ブロック,南関東ブロック,北陸信越ブロック,中国ブロックの4ブロックでこの現象が起こり,その結果として,複数の他党が繰り上げ当選という形で議席を得ることになりました。制度的には,比例代表の議席配分方式(ドント式)の結果として,配分された議席数が名簿登載者数を上回った場合には,残余の議席を他党に順次配分するという運用が行われた,ということになります。

同様の現象は,過去に小泉純一郎内閣の「郵政解散」の際にも見られました。当時も,想定を大きく上回る「大勝ち」により,一部ブロックで比例名簿の候補者数が不足し,結果として他党に議席が回りました。こうした事例は,当該政党への支持がそれだけ厚かったことの一つの証左ではあるものの,同時に,制度設計のあり方を考えさせる契機でもあると感じます。

日本の公職選挙法では,比例代表の議席配分にドント式を用いることとしつつ,「配分された議席数が比例名簿に登載された候補者数を上回った場合は,ドント式により算出された結果に基づき,他の政党へ順次配分される」という考え方に基づく運用が行われています。今回の14議席についても,この既存のルールに従って粛々と処理されたものであり,法律に定められた方式に則って正しく議席配分が行われた,と評価することができます。

もっとも,「選挙は民意の反映である」という素朴かつ基本的な考え方に立ち返るとき,ワタシはこのルールに少なからず違和感も覚えます。選挙である以上,立候補者が存在しないのに議席だけを配分することはできない,という原則自体は理解できます。しかし,今回のように,政策的に明確に対立している政党に,得票の多かった政党の「取り切れなかった議席」が回るという結果は,直感的には有権者の民意から距離があるようにも感じられます。たとえば,自由民主党に投票した有権者の票が,結果として政策が大きく異なる政党の議席につながるとすれば,その有権者の心理としては「自分の一票が,思ってもみなかった方向に使われた」という感覚を持っても不思議ではありません。

そう考えると,今回のように名簿登載者数を超えてしまった議席については,いっそ「欠員」として扱い,次の解散までの間は衆議院の議員定数を14人少ない446人とするという方法もあり得たのではないか,という気がします。あるいは,同じ政党の比例候補のうち,他ブロックで惜敗した候補者に配分するという仕組みを検討してもよいかもしれません。その方が,厳密な制度設計のハードルは高くなるとしても,「投票された民意」と議席との対応関係は,現在よりも分かりやすくなるように思います。

もちろん,どの方式にも一長一短があり,どこまでを制度として許容するかは,慎重な議論が必要です。ただ,今回のようなケースは,いわば現行制度の「すきま」や「バグ」が,たまたま大きく表面化した事例と言えるのではないでしょうか。ワタシとしては,特定の政党の得失という観点ではなく,「民意の反映」という理念に照らして,より納得感の高いルールになり得ないか,今後の立法過程の中で検討されることを期待しています。

行政書士は,日々,法律や制度の条文と向き合う仕事です。条文は整然と書かれていますが,現実社会は必ずしも条文どおりに動くわけではありません。想定外の事態が起きたとき,制度はどのように処理するのか。その“運用の癖”まで含めて理解しておくことが,依頼者の不利益を未然に防ぐことにつながります。

今回の比例代表14議席の問題は,制度が決して万能ではないこと,そして「ルールの内側にある論理」を読み解くことの大切さを改めて示してくれました。ワタシは,条文をそのままなぞるだけではなく,その制度がどう動き,どこにねじれや限界があるのかまで見通したうえで,お客さまと最適な選択肢を考えていきたいと思っています。

法律は冷たい道具ではなく,使い方次第で結果が変わる仕組みです。その“仕組みの読み方”を磨き続けることこそ,行政書士としてのワタシの責任だと考えています。

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