やけっぱちのクリスマスケーキが教えてくれたこと
今日は,クリスマスということで,大昔の思い出を書いてみます。残念ながら,ロマンティックな話ではありませんよ。
ワタシは学生時代,中野区にある学生寮に住みながら,近くのコンビニエンスストアでアルバイトをしていました。当時のコンビニはまだ24時間営業ではなく,営業時間は午前1時まで。ワタシのシフトは夜9時から午前2時まで,週3回勤務でした。時給は800円。今思えば安いですが,当時の学生にとっては「まあまあ」の条件です。
深夜帯を回していたのは,ワタシを含む大学生3人と,新卒ほやほやの若い店長。人間関係も悪くなく,2年近くお世話になった,なかなか居心地のよい職場でした。
そんなアルバイト先で,12月に入ったある日,店長が妙にやさしい声で話しかけてきました。
「相原君,彼女いる?」
突然の質問にワタシは戸惑いながら,「いや,そんなもん,いませんよ」と答えました。すると店長は満足そうにうなずき,「じゃあさ,クリスマスイブに店頭でケーキ売ってくれない?」「時給,ちょっと弾むからさ」
こうして,ワタシのクリスマスイブはサンタクロース役に決定しました。
さらに追い打ちをかけるように,
「あとさ,アルバイトもケーキのノルマ3個ね。どこかで売ってきて」
という,今なら確実に炎上しそうな“鬼通知”。
縁もゆかりもない土地に住んでいるワタシに,ケーキの売り先などありません。悩んだ末,泣く泣く自腹で買うことにしました。「どうせなら」と開き直ったワタシはクリスマスケーキを4個購入し,学生寮の2階から5階まで,各フロアに1個ずつ配ることにしたのです。当時,ケーキ一個は2,000円,ワタシの2日分の尊い労働の対価に相当する貴重な8,000円が溶けてゆきました。
迎えたクリスマスイブ。その日はとにかく寒く,ポケットにカイロを忍ばせ,赤いサンタの衣装を着て,夕方4時から店頭に立ちました。
もともと地声が大きいワタシは,
「クリスマスケーキいかがですかぁ!」
と,腹の底から叫び続けました。
叫ぶこと5時間。人間,やればそれなりに売れるものです。夜9時には,残り3個で完売というところまで漕ぎつけました。
それを見た店長は驚いた様子で,
「いやー,相原君,営業に向いてるね。こんなに売れるとは思わなかったよ」
そう言って,予定より早く店じまいに。
さらに,「残ったケーキは君にあげるよ。寮でみんなと食べな」
と,売れ残りのケーキ3個に加え,売れ残り,廃棄寸前だった大量のポテトと鶏の唐揚げまで持たせてくれました。
寮に戻ると,各階で“モテない男たちのクリスマスパーティー”がすでに始まっていました。私の住む5階にケーキと唐揚げを持っていくと大喝采。「呑め呑め!」と,タダ酒を次々にご馳走になり,他の階に顔を出せば,
「おお,アイハラ!ケーキありがとう!まずは呑め!」
結局,朝まで続く大宴会となりました。
やけっぱちで買ったケーキでしたが,寮中が喜び,みんなが笑顔になり,ワタシ自身も忘れられない夜になりました。店長も,ノルマ以上に売れたこと,最後まで売り切ったことが相当うれしかったようで,それ以降,職場の雰囲気はさらに良くなり,仕事がとてもやりやすくなりました。
今の若い世代は「義務」や「権利」に敏感で,時代の違いを感じることもあります。もちろん,それ自体は大切なことです。ただ,当時のような,ほんの少し踏み込んだ気遣いや,小さな贈り物が人と人との距離を縮めることも,やはり確かだと今でも思います。
行政書士の仕事でも同じです。
書類を整えるだけでなく,お客さまの立場を考え,寄り添い,一歩踏み込んだ対応をすることで,信頼関係が生まれ,仕事がスムーズに進むことがあります。
あのときのクリスマスケーキのような,小さな心配りを忘れずに,これからも「お客さまファースト」を心がけた仕事をしていきたいと思います。
学生時代の少し笑える思い出は,今のワタシの仕事でもその大切さを教えてくれる貴重なエピソードです。
年の瀬を迎えるこの時期,あらためて人とのつながりを大切にしたいものですね。

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