公正証書の電子化が始まった——行政書士として学び直しの日々
ワタシたち行政書士は,遺言の作成支援や任意後見契約の締結などを通じて,公証人の先生方にお世話になる場面が少なくありません。公正証書は「強い証拠力」と,一定の場合には「強制執行力」まで備えた,非常に重みのある公文書です。
その重要性ゆえに,これまでは厳格な手続きに従って紙の証書として作成され,公証人の署名押印を経て原本が公証役場に保管され,正本・謄本が当事者に交付される——というあり方が長く続いてきました。
ところが,公証制度は令和5年の公証人法改正を受けて,大きな転換点を迎えています。改正法の施行により,公正証書の原本は紙から「電子データ(電磁的記録)」で作成・保存することが原則とされ,順次,電子化された手続へと移行していくことになりました。
紙の正本・謄本も引き続き交付は可能とされつつ,その裏側で「真正な原本」は電子データとして管理される方向に舵が切られた点は,公証制度にとってまさに「デジタル転換」と言える変化だと思います。
昨日,ワタシが理事を務める宮城県行政書士会太白支部の研修会で,公証人の先生を講師にお招きし,この電子化の内容と実務上の手続について詳しいお話を伺いました。法務省の資料やニュースだけではイメージしにくかった部分が,ビデオも使った分かりやすい説明で,実際の運用イメージや注意点も含めて具体的に語られ,とても密度の高い学びの時間になりました。
電子化された公正証書では,パソコン画面上に文案が表示され,公証人が内容を読み聞かせたうえで,当事者が画面を確認し,電子署名等の手続を経て作成が完了する流れになるとの説明でした。
本人確認についても,マイナンバーカードや運転免許証などによる確認が中心となり,これまで多くの手続で求められてきた印鑑証明書や実印の持参は,電子化された公正証書では原則として不要になることとなりました。
もっとも,実際の作成場面では,紙に印刷した文案を手元資料として配布しながら説明するなど,「利用者の体感」という意味では従来とあまり変わらない部分もあります。
ただし決定的に違うのは,「最終的な公正証書の原本は電子データとして作成・保存される」という点です。ワタシ自身,「しばらくは紙と電子が並行していくのだろう」と漠然と考えていましたが,原則電子化という明確な方向性をあらためて確認できたことで,自分の認識をアップデートする良い機会になりました。
今回の改正で,ワタシが特に注目したのは,遠隔(リモート)での公正証書作成が制度上位置付けられたことです。公証人役場が遠方にしかない地域や,高齢・疾病その他の事情で移動が難しい依頼人であっても,一定の要件を満たせば,ウェブ会議システム等を使ってオンラインで手続を完結できる仕組みが用意されつつあります。
単なる「紙から電子へ」という形式の変更にとどまらず,公証制度へのアクセスを広げる方向でデジタル化が進んでいる点に,大きな意義を感じています。
制度が変われば,実務も変わります。行政書士として,公正証書の電子化・リモート化の仕組みを正確に理解し,お客様からの「なぜ印鑑証明がいらないのか」「電子で作るとはどういうことか」「データはどこで管理されるのか」といった問いに,自分の言葉で丁寧に答えられることが求められます。
「行政手続きのデジタル化」は,もはや将来の話ではなく,実務の前提条件としてすでに目の前にあるテーマだと実感しています。ワタシ自身も,変化のスピードに置いていかれないよう,日々の学びを怠らず,専門家として少しでも成長していきたい。
昨日の研修会を終えて公証役場からの帰り道,電子化された公正証書のこれからを思い浮かべながら,「デジタルにも強い街の法律家」であり続けたいという気持ちを,あらためて心に刻んだところです。

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