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特典の持続可能性——ANA上級会員制度見直しに見る制度設計の妙

今,一部の方の間で,ANAの上級会員資格の見直しが大きな話題となっています。今日はそのことについて私の考えを書かせていただきたいと思います。

航空会社は,自社の利用者を増やすための施策として,いわゆる「囲い込み」の一環でマイレージサービスを展開しています。一定の条件を満たして搭乗した利用者に対し,飛行距離や運賃に応じたポイントを付与し,それが貯まることで特典航空券と交換できる仕組みです。さらに,特に利用実績の多い顧客には,空港ラウンジの利用や優先搭乗といった上級会員向けの特典が用意されており,快適な移動体験を提供することで,継続的な利用を促しています。

従来のANAの制度では,一定期間内に搭乗回数や飛行距離といった条件を満たせば,上級会員資格を得ることができ,その中には実質的に終身的な性格を持つ資格も存在していました。しかし今回の改訂により,上級会員であっても,継続して一定額以上のクレジットカード利用などを行わなければ資格を維持できない仕組みへと変更されました。いわば,「取得」だけでなく「維持」にもコストが求められる形へと転換されたのです。

その背景としては,まず上級会員数の増加が挙げられます。「一度取得すれば長期間維持できる」という制度設計により,会員数が想定以上に膨らみました。本来は,収益性の高い,欧米線などの長距離路線を頻繁に利用するビジネス客を主な対象としていたはずが,国内の短距離かつ低価格の路線を繰り返し利用し,条件達成を目指すいわゆる「修行」が広く行われるようになったのです。その結果,ラウンジの混雑やサービス水準の低下といった問題が顕在化しました。

さらに見過ごせないのは,こうした利用形態が路線全体に与える影響です。特に離島路線などでは,本来生活の足として利用すべき地元の利用者が予約を取りづらくなるといった弊害も指摘されていました。また,ラウンジの維持管理費や人件費の上昇もあり,従来のままの制度を維持することが難しくなっていたことも,今回の見直しを後押しした要因と考えられます。

ワタシ自身も,サラリーマン時代に出張で何度かビジネスクラスを利用した経験があります。ラウンジの落ち着いた空間で過ごす時間は確かに快適であり,出発前のひとときを豊かにしてくれるものでした。しかしながら,その体験のためだけに,多額の費用と時間を投じて「修行」に励むという発想には,どうしても距離を感じてしまいます。利便性とコストのバランスを考えれば,やはり冷静に判断したいところです。

今回の制度見直しは,「特典の持続可能性」を確保するための調整ともいえるでしょう。限られた資源を適切に配分し,本来のターゲット層に対してサービスの質を維持するという観点からは,企業として合理的な判断です。一方で,従来の制度を前提に行動してきた利用者にとっては,ルール変更の影響が大きく,議論を呼ぶのも当然のことだと思います。

この一件を通じてワタシが感じるのは,制度というものの本質です。どれほど魅力的な制度であっても,利用実態や社会状況が変われば,見直しは避けて通れません。そして,その見直しにおいては,公平性と実効性のバランスをいかに取るかが問われます。

行政書士の業務においても,同様の場面に数多く直面します。許認可や各種制度は,一度取得すれば終わりではなく,継続的な要件の充足や法改正への対応が求められます。むしろ,「維持すること」の方が難しい場合すらあります。

空の上の上級会員資格の話ではありますが,ワタシにとっては,制度の設計と運用の難しさを改めて考える契機となりました。結局のところ,大切なのは「取得のテクニック」ではなく,「制度趣旨に沿った適正な利用」を続けることなのだと思います。

そう考えると,行政書士としてワタシが向き合うべきものも同じです。制度の“抜け道”を探すのではなく,制度の“目的”に立ち返ること。今回の見直しは,そんな当たり前でいて見落としがちな視点を,静かに示しているように感じています。

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