異文化のテーブルで学んだこと
先月末,インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領が,日本を公式実務訪問賓客として訪れていました。首相官邸の動画で拝見した儀仗礼は実に見事で,大統領とともに歩く高市早苗総理の凜とした姿が印象に残っています。報道によれば会談は非常に実りのあるものであったとのこと,今後の両国のさらなる発展に大きな期待を抱かずにはいられません。
ワタシにとってインドネシアは,サラリーマン時代に初めて仕事で深く関わった国です。ワタシが所属していた燃料部の仕事は,火力発電で使用する石油や石炭,LNGといった化石燃料,さらには原子力発電で用いるウラン燃料の調達です。そのため,アメリカ,イギリス,フランス,オーストラリア,カタールなど,多くの国の方々と関わる機会がありましたが,ワタシはインドネシアLNGの担当となったことで,とりわけインドネシアの方々との接点が増えました。
業務上のやり取りは基本的に英語ですが,契約交渉の正確性が何より重視されるため,商社の方が通訳として同席してくれていました。そのおかげで,英語に自信のなかったワタシでも安心して仕事に臨むことができました。契約書も英文が正本ではありますが,丁寧な日本語訳が付されるため,内容の妥当性を確認することに集中できたのは,大変ありがたいことでした。
もっとも,仕事は会議室の中だけで完結するものではありません。会議の後には食事の席が設けられ,エネルギー事情から日常生活に至るまで,さまざまな話題で会話が弾みました。この場面では通訳に頼りきるわけにもいかず,ワタシの拙い英語が試されることになります。当時インドネシアが「世界最強」だったバドミントンの話題などで盛り上がったことを,今でも懐かしく思い出します。
インドネシアの方々の多くはイスラム教徒ですから,食事には細やかな配慮が必要です。豚肉は口にされません。あるとき,「豚肉は入れないでほしい」と伝えて弁当を手配したところ,メインは牛肉で問題なかったものの,サラダにハムが入っており,慌てて取り除いたこともありました。一方で,お酒については実にさまざまでした。本来は禁じられているはずですが,「日本では神様が見ていないから大丈夫」と笑う方もいれば,「ビジネスでは相手に合わせるものだ」と語る方もいて,多くの方がビールや日本酒を楽しまれていたのが印象的です。
そうした席での出来事の中でも,忘れられない一幕があります。話が盛り上がった折,相手のリーダーから「カズ,君はいいやつだし体格もいい(当時はかなり太っていました),飲み比べをしよう」と声をかけられました。思わず課長の方を見ると,「やってやれ」という無言の合図。腹をくくって臨んだものの,結果はあえなく撃沈でした。帰り際に課長から「明日は休んでいい」と言われ,なんとか帰宅したものの,翌日はひどい二日酔いに苦しむことになりました。
こうした海外との交渉には,国民性の違いが色濃く表れます。欧米の方々は,自らの非が明確に示されない限り,簡単に謝罪することはありません。一方でインドネシアの方々は,よい意味でおおらかで,多少の行き違いがあっても,終始友好的に交渉を進めていく印象がありました。
ワタシがこうした経験を通じて学んだのは,「人は皆違う」という当たり前でありながら大切な事実です。立場が変われば考え方も変わり,価値観もまた異なります。これは現在の行政書士の仕事にも通じるものがあります。お客さま一人ひとりの事情や立場,背景を丁寧にくみ取り,その方にとって最も適した解決策を提示すること。それこそがワタシの役割です。
異文化のテーブルで学んだ数々の経験を糧に,これからもワタシは,お客さまの「困った」に寄り添い,解決へと導くお手伝いを続けていきたいと思います。

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