職務上請求書とDXのはざまで——相続実務の現場から思うこと
ワタシの業務の中で,主要業務の一つが相続対応です。相続手続きにおいては,まず相続人を確定し,必要に応じて財産調査を行い,最終的に遺産分割協議書を作成するという流れになります。
相続人を調べるためには,被相続人および相続人の戸籍謄本や住民票などを収集し,相続関係を調べ,証明していく必要があります。これらの書類については,相続人の方々ご自身に取得していただくことも可能ですが,実務の現場ではワタシが一括して収集するケースが多いのが実情です。手続きの煩雑さや,遠隔地の役所への対応を考えれば,専門職が担う意義は大きいと感じています。
このような場面で活躍するのが,いわゆる「職務上請求書」です。これは,弁護士,司法書士,行政書士,税理士,弁理士,社会保険労務士,土地家屋調査士,海事代理士といった,いわゆる「八士業」に認められている制度であり,受任した業務の遂行に必要な範囲で,依頼者の委任状なしに戸籍謄本や住民票等の交付を請求できる専用の書面です。個人情報保護の観点からも,その使用には厳格なルールと責任が伴いますし,事実,行政書士についても,所属する行政書士会により,厳しく管理されています。
もっとも,実務はなかなかに手間がかかります。役所が近隣にあれば直接出向くこともできますが,遠隔地の場合は郵送で請求することになります。職務上請求書に加え,交付手数料,返信用封筒などを同封して送付するのですが,このとき問題になるのが手数料の支払い方法です。多くの自治体では,いまだに郵便局で発行される定額小為替を利用する必要があります。
この定額小為替,額面は50円から1000円まで細かく用意されているものの,1枚あたりの手数料は一律200円です。つまり,50円の証明書を取得するために,200円の手数料を支払うという,にわかには納得しがたい状況が生じます。日々この業務に携わっていると,「それはないよな」「カンベンしろよ」と感じる場面が少なくありません。
ところが最近になって,状況に変化の兆しが見えてきました。クレジットカードによる手数料納付に対応する自治体が増えてきているのです。ワタシも先日,初めてこの仕組みを利用しました。申請者や対象者の情報を入力し,必要な証明書を選択すれば,オンラインで手数料を決済でき,その場で領収証も発行されます。余計な手数料を負担する必要もなく,手続き全体が非常にスムーズに進みました。
相続業務において,戸籍謄本や住民票の収集は避けて通れない作業です。だからこそ,この部分の効率化は,業務全体の質を大きく左右します。事務処理のDX化が進む現代において,こうした取り組みが一部の自治体にとどまるのではなく,全国的に広がっていくことを,ワタシは強く期待しています。
職務上請求書という伝統的な制度と,デジタル技術による新しい仕組み。そのはざまで実務に向き合いながら,より良い形を模索していくことこそが,これからの士業に求められているのではないかと感じています。

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