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松茸の幸せ ― 一万円の贅沢がくれる力

金曜日の夕食は,ワタシにとって一年の中でも特別な時間でした。

我が家の重要な秋の行事「松茸まつり」です。

ワタシの家では,年に三回「特別な夕食の日」があります。

ひとつは秋の新米まつり,もうひとつが今回の松茸まつり,そして最後は冬の味覚を楽しむ大切な日。これについては,また別の機会に書こうと思います。

帰り道,ふと立ち寄ったデパ地下で,ようやく今年初めて松茸を見つけました。例年は9月上旬から出回るのですが,今年はなかなか姿を見せず,「どうしたんだろう」と心配していた矢先の出会いです。並んでいたのは立派な岩手産の松茸。値札を見ると2万円。さすがにすぐには手が出ません。店員さんに話を伺うと,今年の松茸は猛暑と熊との闘いでもあったようです。

 ○猛暑と乾燥の影響で生育が遅れ,育ちが悪かったこと。

 ○熊の出没が多く,危険で採りに行けない人が増えたこと。

 ○せっかく見つけても,収穫前に熊に食べられてしまう被害もあったこと。

そんな話を聞きながら,ワタシが「毎年一度だけ国産松茸を楽しむのが恒例なのですが,今日はちょっと高いですね」と話すと,

「閉店間際ですし,もしよろしければ半額の1万円でいかがですか?」と店員さん。

「えっ?」と思わず耳を疑いました。

ありがたくそのお言葉に甘え,迷わず購入。こうして突然に急遽今年の「松茸まつり」が決まりました。

我が家の定番メニューは次の4品。松茸のフルコースです。

 ① 松茸の天ぷら

 ② 松茸のすき焼き

 ③ 松茸の土瓶蒸し

 ④ 松茸ご飯

妻と手分けして調理し,ビールと日本酒を添えて秋の宴の始まりです。

天ぷらは,海老のすり身を挟んで贅沢に揚げました。衣の中に閉じ込められた香りが口いっぱいに広がります。

松茸のすき焼きは少し意外に思われるかもしれませんが,甘辛い割り下の中でふわりと香る松茸の香りは格別です。

土瓶蒸しは,この日のための専用の土瓶で。吸い口の一滴にまで秋の香りが凝縮されています。

そして締めは松茸ご飯。新米との相性は言うまでもありません。まさに日本の秋を丸ごと味わう幸せな時間でした。

今回の「松茸まつり」にかかった費用は,松茸1万円とほかの食材費。合わせて,二人で1万円と少々。一人あたりにすれば5,000円と少しです。

外で食事をすれば,このくらいの金額はすぐに超えるでしょう。ワタシの場合,食材に投じる「贅沢の限界」は1万円ほど。それ以上になると,財布のひもが自然と固くなります。

けれど,夫婦で相談しながら食材を選び,一緒に調理し,食卓を囲む――この時間の価値を思えば,決して高いとは思いません。

日々の食事は節約も栄養バランスも大切ですが,たまには思い切って「特別な食事」を楽しむ日も必要です。こうしたメリハリが,暮らしに彩りを与えてくれます。ワタシはそれも「ワークライフバランス」の一部だと考えています。

思いがけないご縁から手に入った今年の松茸。こういう,おいしいものをいただけることに感謝しつつ,「来年もまた松茸を食べられるように一生懸命働こう」と,自然に気持ちが引き締まりました。

たまの贅沢は,単なる食の楽しみではなく,生きる力を与えてくれるものなのかもしれません。

今日はちょっとだけ「飯テロ」でしたが,お許し下さい。心から幸せな時間でした。

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