退職金は「ご褒美」から「足かせ」へ変わったのか
先日,インターネットを見ていたところ,「退職金は『ご褒美』から『足かせ』へ変わったのか」という記事を目にしました。九州大学ビジネス・スクール(QBS)の碇邦生氏が執筆した記事で,企業の退職金制度の変化を通じて,日本の雇用慣行の変化について論じた内容です。今回は,その記事の概要と,それを読んで感じたワタシなりの思いを書いてみたいと思います。
記事によれば,伊藤忠商事グループの化学メーカーであるタキロンシーアイが,退職一時金制度を廃止する方針を打ち出したことが話題になったそうです。退職一時金の一部を毎月の給与へ振り替え,残りを確定拠出年金へ上乗せする制度へ移行するという内容でした。
この制度改定については,若手社員から歓迎する声が上がる一方で,長年勤めてきたシニア社員からは反発もあったといいます。それも無理のない話でしょう。退職金とは単なるお金ではありません。長年会社に貢献してきたことへの評価であり,老後生活への安心であり,会社と社員との間に存在する一種の「約束」のような意味を持っていました。
だからこそ,この話題は単なる人事制度の変更にとどまりません。日本企業が長年前提としてきた「会社と個人の関係」が,大きく変わろうとしていることを示しているように感じます。
ワタシは,まだ昭和の色彩が色濃く残る時代に社会人となり,平成から令和にかけてサラリーマン人生を送りました。入社当時は終身雇用が当たり前で,「会社に尽くせば会社が守ってくれる」という価値観が広く共有されていました。
しかしながら,ジョブ型雇用が広がり,人材の流動化が進む中で,企業が「長く勤めたこと」よりも「どのような成果を上げたか」を重視する方向へ進むことは避けられないのでしょう。
そう考えると,退職金という仕組みそのものも,将来的には給与や年金制度など,別の形での処遇へと変わっていくのかもしれません。
ワタシ自身は退職金をいただいたことで住宅ローンを完済し,老後の生活設計にも一定の見通しを持つことができました。その経験があるからこそ,退職金制度の変化に時代の流れを感じる一方で,少し寂しさも覚えます。
もっとも,本当に大切なのは退職金という制度そのものではなく,将来への安心をどのように確保するかということなのでしょう。
相続や遺言,成年後見などのご相談を受けていると,多くの方が共通して望んでいるのは「将来への安心」です。制度や働き方が変わっても,安心して暮らしたいという人の願いは昔も今も変わりません。
退職金が当たり前だった時代を知る一人として,社会の変化に少し寂しさを感じながらも,新しい時代に合わせた人生設計の大切さを改めて考えさせられる記事でした。そして行政書士としても,皆さまの将来への安心づくりをお手伝いできる存在でありたいと思っています。

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