おひとりさまの暮らしを支えるという仕事
3月に入り,いつも通り,生活のお手伝いをしている「おひとりさま」の面会に行ってきました。
その方はお体が不自由で,現在,長期入院されています。これまで身の回りのお世話をされていたご主人が亡くなられ,生活を支えてくれる方がいなくなってしまいました。こうした状況に備える仕組みの一つが「生前事務委任契約」です。ワタシはその契約に基づき,受任者として日々の生活のサポートをしています。
生前事務委任契約とは,ご本人に十分な判断能力があるうちに,信頼できる家族や専門職に対して財産管理や各種手続きなどを委任しておく契約です。将来,認知症などで判断能力が低下した場合には任意後見契約へと移行し,さらに葬儀や納骨,行政手続きなどを行う死後事務委任契約を併せて結ぶこともあります。身寄りが少ない方や,将来に不安を感じている方にとって,大切な備えの一つといえる仕組みです。
これらの契約は,公証人が関与して作成する公正証書によって締結されます。ご本人の意思を確実な形にし,生涯にわたって守るための制度です。
昨日の面会でも,お願いされていた金額を通帳から下ろし,頼まれていた品物を購入し持参しました。また,いつものことなのですが,おひとりさまがお好きな甘いものを少しお土産に持っていきました。これは契約に定められているわけではありませんが,ワタシからのささやかな気持ちとして毎月持参しているものです。
今回はご本人から「和菓子が続いたから洋風のものが食べたい」と言われていたので,クッキーやマドレーヌを少し選んで持っていきました。さらにこれも毎月の恒例ですが,「病院のお米がちょっと……」というお話をよく伺うので,お米の美味しい店のおにぎりを一つ添えました。
こうしたお手伝いの場面で,「肉親のつもりで面倒を見ます」という言葉を耳にすることがあります。耳触りは良い言葉ですが,実際には使えるお金にも限りがありますし,あくまで契約に基づく役務の提供である以上,その言葉をそのまま実行することは難しい面もあります。
その代わりに,ワタシが心がけていることがあります。それは,「契約として行う以上,自分にできることについては労を惜しまず,委任者に満足していただけるベストのサービスを提供する」ということです。
ワタシの仕事の中心は金銭管理や,役所・医療機関などへの対応ですが,それに付随して買い物やお使いを頼まれることもあります。そうした一つ一つの用事についても,できる限りご本人の意向を踏まえ,満足していただけるよう心がけています。これはワタシにとってのやりがいであり,同時にプロフェッショナルとしての矜持でもあります。
また,入院されている委任者と面談するときは,いつもニコニコと笑顔で,できるだけ明るくコミュニケーションをとるよう心がけています。今のおひとりさまの委任をお受けしてから1年が経ちました。当初はどこかぎこちなかった会話も,今ではずいぶん弾むようになり,買い物やお使いも遠慮なく頼んでいただけるようになりました。お土産についても,「次はこれが食べたい」といったリクエストをいただけるようになっています。
毎月わずか1時間ほどの面会ですが,ワタシはこの時間をいつも楽しみにしています。お客さまの反応が直に感じられる,とてもやりがいのある仕事の一つです。
お手伝いしているおひとりさまは,慢性疾患で入院されているとはいえとてもお元気で,お付き合いはまだまだ続きそうです。
この仕事をしていて,いちばんの報酬だと感じるのは,面会したときに見せてくださるあの素敵な笑顔です。来月もまたその笑顔で迎えていただけるよう,生前事務を受任している者として,ワタシにできるお手伝いのベストを尽くしていきたいと思います。

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