最新情報NEWS

仕切り直しのきく人生に──福岡堅樹選手の華麗な転身に思うこと

先日,インターネットでラグビー元日本代表・福岡堅樹選手の近況を知りました。2019年のラグビーワールドカップで日本代表の快進撃を支えた彼は,現在33歳。順天堂大学医学部の5年生として,医師への道を着実に歩んでいるという報道に,ワタシは思わず目を見張りました。

ラグビーという激しい競技の第一線から,医学という全く異なる世界へと挑戦する姿は信じられないような偉業で,凡人のワタシから見れば,華麗でまぶしい転身ですが,そこには努力覚悟,そして確かな実力社会の受け皿があってこそ成り立つ挑戦なのだと思います。

海外では,こうした転身はそれほど珍しくありません。たとえば,かつて広島カープで活躍したホプキンス選手は,現役時代から学業に励み,引退後は医師になりました。欧米では,有名なスポーツ選手が引退後に医師,弁護士や会計士など高度な専門職につく例が多く見られます。日本でも,プロ野球選手が引退後に公認会計士になったという話を聞いたことがありますが,残念ながらそれは例外的なケースです。

それどころか,日本では一度何かに挫折すると,その後の人生が閉ざされてしまうような風潮すらあります。大学受験に失敗した人,終身雇用を前提に大企業に入社したものの,思わぬところでつまずいた人──そうした人々が再挑戦する機会を得るのは,決して容易なことではありません。

特に,就職氷河期世代の方々は,卒業時期が不況と重なったために正社員になれず,今も非正規雇用で働き続けているという話をよく耳にします。ワタシ自身はバブル期に大学を卒業し,比較的スムーズに就職できた幸運な世代でした。企業の採用活動は活発で,面接でも温かく迎えられました。それだけに,生まれた時代だけで人生が左右されることの不公平さはよくわかります。

とはいえ,何も打開策がないわけではありません。例えば,資格試験を通じて新たな道を切り開くことは可能です。ワタシの持つ行政書士をはじめ,宅地建物取引士,社会保険労務士,ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得し,それを武器に再スタートを切る人も増えています。

そして,こうした挑戦を支える制度も少しずつ整ってきています。たとえば「中途採用・再就職支援制度」。これは,企業が中途採用枠を設け,就職氷河期世代などの再挑戦者を雇用する際に,国や自治体が補助金を出したり,税制優遇を行ったりする制度です。行政書士として,ワタシはこのような制度の申請手続きや要件整理を通じて,企業と挑戦者の橋渡しをすることができます。

また,「起業支援・地域創生制度」も注目すべきです。地方で新たな事業を始める人に対して,創業支援金や空き家活用補助金などが用意されており,地域に根ざした挑戦を後押ししています。たとえば,仙台市太白区のような地域で,空き店舗を活用してカフェや学習支援拠点を開設する場合,行政書士は事業計画の法的整備や補助金申請,会社設立の手続きなどを担い,挑戦者の「制度の壁」を取り除くお手伝いができます。

福岡堅樹選手のように,ひとつの道を極めた後に,まったく新しい人生に挑戦する姿は,私たちに大きな希望を与えてくれます。そして,そうした転身,仕切り直しができる社会こそが,これからの日本に求められているのではないでしょうか。

少子高齢化が進む日本では,労働力人口の減少が避けられません。だからこそ,安易に海外の労働力を求める前に,国民一人ひとりの人生を大切に育て,多様なバックグラウンドを持つ人材を活かす仕組みがを作ることが必要です。一度失敗した人が,再び挑戦できる社会。それは,単なる個人の救済ではなく,社会全体の活力を生み出す源泉になるはずです。

ワタシは,そんな社会の実現に向けて,行政書士として,そして一人の市民として,できることを積み重ねていきたいと思います。制度は冷たいものではなく,挑戦者の背中を押す力にもなり得るのです。そして,誰もが「仕切り直しのきく人生」を目指せる社会へ──その一歩を,今こそ踏み出す時だと思います。

PAGE TOP