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現場こそが教科書――丁種会員取得で得た教訓

丁種会員(ていしゅかいいん)」という言葉を聞いたことがある方は,あまり多くないと思います。
これは,自動車を登録する際,運輸支局に車両を持ち込まずに,利用者の自宅や事業所など車両の所在場所でナンバープレートの取り付けと封印を代行できる行政書士を指します。通常,自動車の登録を行う際には,車両を管轄の運輸支局などに持ち込み,その場でナンバーの交付と封印を受ける必要があります。しかし,「封印取付受託者」として国から委託を受けた者は,運輸支局に車を持ち込まなくても,お客さまのもとでナンバープレートの取り付けと封印を行うことができます。

この制度には,甲種(運輸支局等=お役人),乙種(新車ディーラー),丙種(中古車販売団体),そして丁種(行政書士会)があります。
ワタシのような「丁種会員」は,地元の行政書士会を通じて封印の再委託を受け,お客さまの車両に出張して封印を行うことができます。たとえば引っ越しなどでナンバー変更が必要な場合でも,お客さまがわざわざ陸運支局等に車を持ち込む必要がなくなる利便性の高い,とても実用的な制度です。

この資格を取得するには,行政書士会が実施する研修を受け,その後に行われる「効果測定(=試験)」に合格しなければなりません。ワタシも意気揚々と申し込みましたが,前日の夜に改めて研修会の案内文を読み返して愕然としました。
そこには,
「研修内容以外でも自動車登録業務全般から出題します」
「資格の厳格化を図るため,合格点は従来の70%から80%に引き上げます」

という,信じられない,まるで追い打ちのような記載があったのです。

こんな話,聞いてないよ!」と焦ったワタシは,夜な夜なネット検索し,「丁種会員 効果測定」というキーワードで他県の問題を探し出しては,一夜漬けで丸暗記を行い,できる限り体裁を整えて研修に臨みました。

研修自体は基本的な内容で,スムーズに修了できましたが,問題はその後の効果測定でした。出題内容は想像以上に難しく,知らない知識のオンパレード。正直なところ「これはムリだ」と感じ,20分ほどで諦めて退室してしまいました。
この時のことは以前「『幸運な失敗』から学んだ教訓」という記事でも書きましたが,本当に落ち込んだ出来事でした。

「幸運な失敗」から学んだ教訓 | あいはら行政書士事務所

それだけに,後日届いた行政書士会からの通知を開け,「合格」と書かれていた瞬間は信じられない思いでした。思わず「ウソでしょ?」と声が出たほどです。
まさに「幸運な合格」でしたが,ありがたく登録をさせていただきました。

正直,腑に落ちない合格でしたのでその理由について,自分なりに考えてみました。
その要因は,おそらく,少ないながらも実務を経験していたことが大きかったのだと思います。ワタシは行政書士になる前から,お金の節約のため,自分のクルマやオートバイの名義変更等の手続きは,陸運支局にも何度も足を運び自分で手続きを行っていました。
また,行政書士になってからも,お客さまからのオートバイの廃車,名義変更,同僚の行政書士の登録業務をお手伝いするなどして,自動車の登録業務の全体の流れを「知らず知らず」のうちに理解していたのだと思います。

その拙い経験が,わずかでも試験の際に助けてくれたのだと思います。どのような業務についても初めは,基礎知識を学ぶことは大切ですが,その先の実務とリンクして,初めて身についた知識になるのではないかと感じました。やはり,机上の知識だけでは限界があります。まさに「畳の上の水練ではダメだ」という,貴重な教訓を改めて実感しました。

今後はさらに知識と実務を磨き,多くのお客さまの利便性を高めるお手伝いができるよう努力していきたいと思います。
「現場を知る行政書士」として,封印業務に限らず,自動車関連の各種手続きにも積極的に取り組んでいくつもりです。

この合格は,ワタシにとっては,本当に幸運な出来事でした。でも,その背後には,小さくても確実に積み重ねてきた経験があった。そう信じています。

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